東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構の深野祐也助教らは、絶滅危惧種のライチョウの一般公開が、市民の知識や保全意欲を高めていたことを多角的な実証から明らかにした。
深野助教らは、環境省、富山ファミリーパーク、那須どうぶつ王国、上野動物園、大町山岳博物館、いしかわ動物園、日本動物園水族館協会と共同でこの研究に取り組んだ。
日本各地にある動物園は、レクリエーションの場であるだけでなく、さまざまな絶滅危惧種の保全や教育・普及啓発を行っているが、普及啓発効果を定量化するのは困難だった。
深野助教らは、2019年3月に日本の5つの動物園で行われたライチョウの一般公開イベントに注目。オンラインアンケート、ソーシャルメディア分析、寄付サイトのアクセス解析などによって一般公開による普及啓発効果を多角的に検証した。
公開前後に行ったアンケート調査により、市民のライチョウに関する知識(ライチョウが絶滅危惧だと知っている人)が、ライチョウが分布する県で一般公開後に増加したことがわかった。
また、ライチョウのウェブ検索数やソーシャルメディアでの発信が増加し、ライチョウ保全のための寄付サイトへのアクセス数が有意に増加していた。
これらの結果は、動物園は絶滅危惧種の保全の重要性を、広く市民全体に普及啓発する重要な役割を担っていることを示している。深野助教らは「動物園は飼育・展示している絶滅危惧種を有効に活用し、メディアと協力することで、生物多様性保全の普及啓発の拠点になることができると考えられる」とした。