2021年4月20日 【研究成果】コロナ感染拡大は生活排出CO2に影響なし 東大研究Gが調査分析

 

東京大学特任助教らは、新型コロナウィルス感染拡大初期(2020年1月~5月)で行われた活動自粛や緊急事態宣言により、日本の人々の消費行動がどのように変化し、どの程度生活に伴う二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)が変わったのかを明らかにした。家庭部門のライフスタイルおよび家計消費パターンは大きく変化したが、家庭消費に由来する二酸化炭素排出量にはほとんど影響が見られなかったことが明らかとなった。この研究結果は、消費行動の変化が自動的に自然環境にプラスに働くわけではないことを示唆しており、今後の脱炭素化の取り組み方の議論に一考を促すものとなった。

この調査研究を行ったのは、東大未来ビジョン研究センターの龍 吟特任助教らの研究グループ。新型コロナウィルス感染拡大初期に発生した家庭部門消費行動の急激な変化に注目し、人々が消費した製品やサービスが生産される過程で発生した二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)について研究を行った。

わが国では家庭部門のカーボンフットプリントが国内全体の二酸化炭素排出量の7割程度を占めていることから、人々のライフスタイルや消費活動の変化が二酸化炭素排出量を大きく変える可能性があると考えられている。このようななか、2020年初頭から全世界に広がった新型コロナウィルスの感染拡大(コロナ禍)が深刻かつ急速に人々のライフスタイルを変化させ、逆説的に「ライフスタイルの変化による二酸化炭素排出量変動の検証」という自然実験(実社会での実験)を可能にしたとする見方もある。

この研究では、年齢別・消費項目別の家計調査(家庭の消費データ)と産業連関分析(サプライチェーン分析)を通じて、新型コロナウィルス感染の拡大初期段階(2020年1月~5月)の家庭部門における仕事や消費生活の大きな変化が、どのようにカーボンフットプリントに影響を与えたのかを調べた。

CO排出パターン、昨年と同様

その結果、全体としては大きな変化がなかったことが明らかになった。この調査結果は、ある項目での消費の増加と別の項目での消費の減少(さまざまな消費品目の間におけるトレードオフ)によるもの。すべての消費に伴うカーボンフットプリントを合計すると、家庭消費に伴う全体としてのCO排出パターンは例年の傾向と同様であり、かつ各年齢層間でもほぼ一貫していることが調査結果から読み取れた。

例えば、移動の自粛によりガソリンの消費や外食などに伴って排出されたカーボンフットプリントは大きく減少したが、食料消費に伴って排出されたカーボンフットプリントは大きく増加した。

この結果は、コロナ禍に起こった消費行動の変化が自動的に環境にプラスに働くわけではないことを示唆しており、研究グループでは「今後の脱炭素化の取り組み方の議論に一考を促すものであると考えられる」としている。

 


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