■ポイント□
〇全国を対象に新型コロナ外出自粛が気温・人工排熱・電力消費(CO2排出)へ及ぼす影響を推定
〇東京都心部では、気温が最大0.2度低下、人工排熱・電力消費量(CO2排出量)は7割減少
〇大規模な人間行動変容は、局所的なヒートアイランド対策と省エネ(脱炭素)になる
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)などの研究グループは、都市気候モデルに社会ビッグデータであるリアルタイム人口動態データなどを取り入れて活用する新手法に基づき、新型コロナウイルス感染拡大に伴う2020年4月から5月の緊急事態宣言期間における大規模な外出自粛が、都市の気温・人工排熱量・電力消費量(電力由来CO2排出量)へ及ぼす影響を日本全国の都市を対象に推定した。東京都心で日中の気温が通常時に比べて最大0.2℃低下し、電力消費量(CO2排出量)は7割減少したことを示している。この研究により、外出自粛のような大規模な行動変容は、局所的なヒートアイランドや電力消費量・CO2排出量に影響を与えることが定量的に明らかになった。
この研究は、産総研環境創生研究部門環境動態評価研究グループの髙根雄也主任研究員(兼務:ゼロエミッション国際共同研究センター環境・社会評価研究チーム)、中島 虹産総研特別研究員、明星大学の亀卦川幸浩教授が行ったもの。
高根主任研究員らは、開発した手法と地球温暖化予測技術を用いて、地球温暖化がさらに進行する将来の気候下における人間の行動変容が気温・電力需要(CO2排出量)や人間健康リスクにおよぼす影響を予測し、2050年カーボンニュートラルに向けた街づくりや気候変動適応策の提案につなげることとしている。
さらに、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)やネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)のような個別の脱炭素技術の導入・普及による都市部での省エネ・CO2排出量削減・ヒートアイランド緩和のポテンシャルを広域的・定量的に評価。最終的に、さまざまな個別の対策技術の定量的な評価を行い、最適な技術の組み合わせや新たな対策のアイデアなどを提言することを目指すこととしている。
研究成果の詳細は、6月2日にNature Portfolioの論文誌 NPJ Climate and Atmospheric Scienceに掲載された。