国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)活断層・火山研究部門海溝型地震履歴研究グループの澤井祐紀上級主任研究員、行谷佑一主任研究員らは、カナダ・サイモンフレイザー大学助教とともに、千葉県の太平洋岸で歴史記録にない津波の痕跡を発見した。約1000年前に発生した房総半島沖の巨大地震によって九十九里浜地域が浸水したものとみられる。
この研究成果は、産総研地質情報研究部門、米国サザン・ミシシッピ大、筑波大、東京大、米国バージニア工科大、シンガポール・南洋理工大、アイルランド・メイノース大、英国地質調査所との共同研究により判明した。
産総研はこれまでに、過去に発生した津波の痕跡を調べるための地質調査を日本各地で行ってきた。特に2011年に発生した東北地方太平洋沖地震以降、その破壊領域の南方の海域に面する千葉県九十九里浜地域では、掘削調査により過去の津波の痕跡である津波堆積物が2層発見されている。また、放射性炭素年代測定により、2層のうち古いほうの津波堆積物は約1000年前に堆積しており、歴史上知られていない津波の痕跡であることが分かった。
房総半島沖に存在する〝プレートの三重点〟
房総半島沖には、太平洋プレート、大陸プレート、フィリピン海プレートが1カ所で接する〝プレートの三重点〟が存在する。約1000年前の津波堆積物の分布を再現するために津波浸水シミュレーションを行ったところ、これらのプレート境界のうち、フィリピン海プレートに対して太平洋プレートが沈み込む領域が破壊された場合、比較的小さなすべり量でも九十九里浜地域を大きく浸水させる津波が発生することがわかった。
この結果は、従来考えられてきた相模トラフや日本海溝に加えて、房総半島東方沖の海底下に位置するフィリピン海プレートに対して太平洋プレートが沈み込む領域が巨大地震・津波を起こす場所として注意すべきことを示している。
研究の詳細は、9月2日(イギリス夏時間)にNature Geoscience誌に掲載された。