東北大学タフ・サイバーフィジカルAI研究センターと㈱NTTデータは、インフラ設備点検に適したドローン離着陸システムに関する共同研究を4月16日に開始した。
東北大が有するドローン離着陸システムの基本技術と、NTTデータがこれまで航空分野で培ったドローンの複数集中管理と空域管理のノウハウをもとに、電力・ガス・水道・通信等の各種設備や橋梁等のインフラ点検業務に適した離着陸システムの研究に取り組み、インフラ設備点検業務の効率化や高度化、ドローン市場の発展を目指す。
昨今、経年設備の増加や労働人口減少が社会課題となっており、保守員の高齢化や点検コスト負荷を背景として、ドローンによるインフラ設備点検のニーズが高まっている。
東北大は、産官学民協働による共創的価値を生み出すことを目的に「タフ・サイバーフィジカルAI研究センター」を設立。エコシステムの中で最適化された課題解決の手段を社会へ実装する研究に取り組んでいる。ドローン関連技術の一つとして、ドローンが離着陸や充電を行う拠点(ドローンポート)での従来の問題点を解決する「EAGLES Port」の研究を進めている。
NTTデータは、デジタル技術を用いたスマートメンテナンスの開発、展開に取り組んでおり、要素技術の一つであるドローン分野については、これまでに航空分野で培った経験を生かし、複数ドローンの集中管理および空域管理を実現するドローン運航/交通管理ソフトウエアパッケージ「airpalette® UTM」を提供。ドローンの安全運航を支援している。
両者は2020年度からドローン関連技術に関する意見交換を開始し、両者の持つ技術やサービスを融合することで社会課題・産業課題の解決に寄与できることを確認したことから、このたび共同研究を進めることとした。
不安定性と時間増の問題点を根本解決
これまでのドローンポートは垂直方向への離着陸を前提としたものが主流であったが、着陸時の推力低下や風の影響による機体の不安定さや、それによる離着陸に要する時間増等が 課題となっている。また、従来のドローンはGNSS(Global Navigation Satellite System)により自己位置を特定しているが、衛星の補足数や天候の影響で十数㍍の座標誤差が生じるという問題があった。
これらの課題に対して、研究対象であるEAGLES Portは、ドローンが安定して飛行できる速度のまま、水平方向に連続して離着陸可能とする技術と、吊り下げ方式による格納を実現することにより、不安定性と時間増の問題点を根本的に解決する。また、マーカー技術 HueCodeにより、常に高い座標精度での自己位置特定を可能にする。
共同研究では、インフラ・設備点検のユースケースを想定し、移動式のドローンポート活用や座標誤差が生じるGNSSに頼らないドローン飛行制御の技術研究に取り組み、両社の強みを生かした役割分担でフィールド実証を通して研究成果を確認する。