高山植生は気候変動に対して特に脆弱であるとされており、効果的な保全対策を実施するためには、気候変動下での高山植生の分布がどのように変化するかを定量的に予測する必要がある。
国立環境研究所の研究グループは、大雪山国立公園の雪田草原や風衝草原などのいわゆる「お花畑」を形成する草原性の高山植生と亜高山帯の森林植生の生育適地面積を推定するモデルを構築し、気候変動シナリオのもとで2050年と2100年時点の適地面積の変化予測を行いた。
その結果、現状のペースで温室効果ガス排出が続くシナリオでは、将来の高山植生の生育適地はほぼ消失し、山頂付近まで亜高山帯森林植生の適地に置き換わることが予測された。最も排出量を削減するシナリオでも高山植生の適地は大きく減少するものの、一部で残存する予測となり、排出シナリオごとに大きく結果が異なった。
この研究は、国内の草原性の高山植生の気候変動下における面積変化を定量的に予測した初の研究で、高山の生物多様性保全の観点でも速やかな温室効果ガス排出削減が重要であることを示している。
この研究成果は、12月13日付でWiley社から刊行される『Applied Vegetation Science』に掲載された。