昨年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって昨年2~3月の中国の化石燃料消費による二酸化炭素(CO2)の放出量が減少したものの、同国での感染拡大が沈静しつつある2021年の放出量は、以前のレベルに回復していることが、国立環境学研究所と国立境地研究所の調査研究でわかった。
放出量変化の検出は、日本最南端の有人島である波照間島で観測される大気中CO2とメタン(CH4)の変動を解析することで行った。
冬の間、波照間島はアジアモンスーンの影響により中国の汚染空気の影響をしばしば受けるため、波照間島で観測された大気中CO2とCH4の変動比の変化は上流の中国の放出量の変化を反映していることが、これまでの研究から明らかになっている。
中国のほぼ全土でロックダウンが実施された2020年2月に変動比が急激な減少をみせていたが、2021年1~3月の変動比はほぼ2019年以前のレベルに回復していることが明らかになった。このことは、中国の経済活動が既に回復していることと整合する結果といえる。
前回の報告とともに、今回の結果は、この研究で提案された手法が国別・地域別温室効果ガス排出量の客観的な検証に役立つことを立証したもので、今後パリ協定に基づく排出削減検証への応用が期待される。