2022年1月19日 【理研】有機合成反応で乳がん手術を改革-迅速・簡易・安価な手術中がん診断技術を世界基準へ-

理化学研究所(理研)とロシア・カザン大学などの国際共同研究グループは、乳がんの手術中に摘出した組織で有機合成反応を行うことにより、乳がん細胞の有無だけでなく、がんのさまざまな種類(形態)を従来よりもはるかに短い時間で、簡易に識別できる診断技術を開発した。

この診断技術は、理研開拓研究本部田中生体機能合成化学研究室の田中克典主任研究員、アンバラ・プラディプタ基礎科学特別研究員、盛本浩二客員研究員、大阪大学大学院医学系研究科の多根井智紀助教、野口眞三郎教授、カザン大のアルミラ・クルバンガリエバ准教授らの国際共同研究グループにより開発された。

この研究成果は、従来の手術中での病理学的診断法に代わって、今後、乳がん切除範囲を迅速・簡易・安価に判断する世界基準の診断技術として活用されると期待される。

田中主任研究員らは以前、酸化ストレス条件下で、細胞で発生する「アクロレイン」が蛍光基を持つ「アジドプローブ」と有機合成反応し、細胞を蛍光標識できることを見いだした。

今回、国際共同研究グループは、この有機合成反応を用いて、さまざまなヒトがん細胞でアクロレインが多量に発生していることを突き止めた。さらに、乳がん手術で摘出した〝生〟の組織にこの手法を適用したところ、わずか数分で97%の高感度でがん細胞の有無を判別し、かつさまざまな種類の乳がんを識別することに成功した。

この研究は、ドイツの科学雑誌『Advanced Science』のオンライン版(11月27日付け)に掲載された。


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