理化学研究所(理研)開拓研究本部伊藤ナノ医工学研究室の森島信裕特別嘱託研究員、創発物性科学研究センター創発生体工学材料研究チームの秋元淳研究員、伊藤嘉浩チームリーダー(開拓研究本部伊藤ナノ医工学研究室主任研究員)らの研究チームは、ヒトの血液中にある新型コロナウイルスに対する抗体の量(抗体価)を、迅速に高感度で測定できる「ウイルス・マイクロアレイ検出システム」を開発した。
この研究成果により、今後重要となる新型コロナワクチン接種の効果を、医療現場で効率的に精密検査することが可能になるものと期待される。
現在、新型コロナウイルス感染症の抗体検査は、免疫クロマトグラフィー法による医療現場での定性的な簡易検査、もしくは検査センターへ血液サンプルを送付し、数日から1週間かけて行う定量的な精密検査しかない。
今回、研究チームは、新型コロナ感染症を構成するヌクレオカプシドタンパク質とスパイクタンパク質をマイクロアレイチップ上に固定化。それら複数のタンパク質に対する抗体量を完全自動で測定するウイルス・マイクロアレイ検出システムを開発した。この検出システムでは、医療現場で採取した1滴の血液から30分程度で抗体量の定量測定が可能であり、感度は免疫クロマトグラフィー法の約500倍にのぼる。
この研究成果は、日本化学会の欧文誌『Bulletin of the Chemical Society of Japan』のオンライン版(9月3日付)に掲載された。
新型コロナウイルスのワクチン接種が世界中で進められている。ウイルスに感染しているか、もしくはワクチン接種により抗体ができたかどうかを調べる抗体検査は、医療現場で指先から採血し、免疫クロマトグラフィー法によって行われているが、肉眼に基づく検査のため定性的であり、感度も十分でない。
一方、検査センターに検体を送って精密な定量検査を行うには、腕などからの採血によるより多くの血液量を要するだけでなく、相応の時間もかかっている。