大きな豪雨被害をもたらす線状降水帯の予測精度が大きく改善―。理化学研究所(理研)計算科学研究センターデータ同化研究チームの三好建正チームリーダー(開拓研究本部三好予測科学研究室主任研究員、数理創造プログラム副プログラムディレクター)、前島康光特別研究員らの共同研究チームは、2020年7月に豪雨をもたらした線状降水帯の予測に対し、最新鋭のフェーズドアレイ気象レーダを仮想的に九州全土に展開した場合の有用性を評価し、線状降水帯による豪雨発生の予測精度を大きく改善できることを示した。
この研究成果は、地球規模の温暖化により脅威を増す線状降水帯の予測精度の向上や、被害の軽減に向けた新しい予測技術や観測システムの提案につながると期待できる。
広範囲にわたり次々と積乱雲が発生する線状降水帯による豪雨に備えるには、観測を強化し、得られるデータを高度に活用する予測技術を開発することで、シミュレーションによる気象予測を向上させることが重要。このために、仮想の観測システムをシミュレーションして数値天気予報への有効性を評価する研究手法を「観測システムシミュレーション実験(OSSE)」と呼ぶ。
今回、共同研究チームは、スーパーコンピュータ「富岳」を使ってOSSEを行った。具体的には、2020年7月に豪雨をもたらした線状降水帯周辺の大気状態を数値化し、九州全土に最新鋭のフェーズドアレイ気象レーダを仮想的に展開した場合の観測データをシミュレーション。
その結果、フェーズドアレイ気象レーダによって30秒ごとにすき間なく雨雲の立体構造を捉えることで、線状降水帯の豪雨の予測精度を大きく改善できることを定量的に確認した。
この研究成果は、科学雑誌『SOLA』(3月7日付)に掲載された。