□ポイント■
〇4歳児の約2割にビタミンDの不足または欠乏がみられた
〇標準的な小児でも、ビタミンD欠乏は身長の伸びを阻害
〇冬の屋外活動の減少はビタミンD欠乏のリスク因子に
南九州・沖縄ユニットセンター(熊本大学)助教の倉岡将平らの研究チームは、エコチル調査によって得られた約3600人の血中ビタミンD値と成長率(身長の伸び)のデータについて解析した。その結果、ビタミンD欠乏と判定された子どもでは年間あたりの身長の伸びが0.6cm小さいことが明らかになった。また、冬における屋外活動が少ないことがビタミンD欠乏のリスク因子である可能性が示された。この結果により、幼児の成長にとって適切な血中ビタミンD値や屋外活動の程度が明らかになることが期待される。
この研究成果は、スイスの学術出版社MDPIから刊行される栄養学分野の学術誌「Nutrients」に公開された。
今回の研究では、エコチル調査の詳細調査の参加者の中から、正期産で基礎疾患のない3624人の子どもを対象とした。2歳時と4歳時の身長と体重、4歳時に採取した血液から血中ビタミンD濃度、さらに4歳時の質問票(2015年~2018年に実施)から屋外活動(外遊び)の時間を抽出。関連について解析した。
解析の結果、全体の23.1%がビタミンD不足(血中ビタミンD濃度が20ng/ml未満)であることが分かった。さらに、全体の1.1%がビタミンD欠乏(血中ビタミンD濃度が10ng/ml未満)であることも明らかとなった。ビタミンDと成長の関連を検討したところ、血中ビタミンD濃度が10ng/ml未満であった子どもは、そうでない子どもに比べて身長の伸びが有意に小さいことが判明。ビタミンD不足のない子どもの身長は年間約8㎝伸びているのに対し、ビタミンD欠乏がみられた子どもの身長の伸びは年間7.4 ㎝に満たないという結果となった。
また、血中ビタミンD濃度と屋外活動の時間の関係性についても検討したところ、血中ビタミンD濃度が低いグループでは日中に屋外で遊ぶ時間が短い傾向があり、特に冬における差が大きいという結果がみられた。
血中ビタミン D 濃度は日照時間の短い冬に下がりやすいため、冬の期間に屋外活動の時間が少ないとビタミンD不足を増悪させることが明らかとなった。
この研究では、エコチル調査のデータを活用することで、標準的な小児でビタミンD欠乏が身長の伸びに関連しているということを世界で初めて明らかにすることができた。
この成果は、ビタミンD不足が子どもの低身長や成長障害のリスク因子であることを示唆している。しかし、この研究では経時的に対象者の血中ビタミンD濃度を測定しているわけではなく、また血中カルシウム濃度や骨密度などの評価も行っていない。このため、ビタミンD欠乏がどのようなメカニズムで身長の伸びを阻害するのかを明らかにすることはできてないという。今後の研究でメカニズムが解明されることが期待される。