2022年8月23日 【横浜市大】高齢者のケアの分断を調査 横浜市のDB用いて75歳以上住民の全数調査

□ポイント■

〇国内初の「ケアの分断」に関する研究

〇75歳以上の後期高齢者の平均受診医療機関数は3.42か所

〇1年間に2ヵ所以上の医療機関を受診した人は全体の85%

〇分断の程度が高いとされるケアの分断指標0.7以上の割合は全体の26.1%

 

横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻の金子 惇講師らの研究グループは、横浜市医療局医療政策課と連携し、横浜市のデータベース(YoMDB)を用いて、75歳以上の高齢者の「ケアの分断」を調査した。その結果、他国の研究結果からケアの分断の程度が高いとされるケアの分断指標0.7以上(0が最も分断の程度が低く、1が最も高い状態を表す)の割合が全体の26.1%だった。この値は、かかりつけ医療機関の質を表す目安の一つであり、より継続的・包括的な医療を提供することでこの指標が改善すると考えられる。

一人の医師や1ヵ所の医療機関で継続的に医療を受ける〝ケアの継続性〟はかかりつけ医の質の重要な要素であり、ケアの継続性が高い方が救急室受診・入院・死亡が少ないことが知られている。

〝ケアの継続性〟と反対に、かかりつけ医に加えて複数の医療機関を受診することは「ケアの分断」と言われており、ケアの分断の程度が高いと過剰な検査や救急室受診、入院が多いことと関連している。

わが国のように、患者が受診する医療機関をある程度選択できる医療システムの国ではこの「ケアの分断」がかかりつけ医療の質を表す指標の一つとなると考え、「ケアの分断指標」を算出した日本で初めての「ケアの分断」に関する研究を行った。

研究対象は41万3600人

この研究はレセプトデータを用いた横断研究で、2018年4月1日から2019年3月31日の間に横浜市に住民票があった75歳以上の住民かつ後期高齢者医療広域連合加盟者および生活保護受給者で、年4回以上(同一の医療機関の年4回以上の利用も含む)医療機関を利用した全て人が対象となった。

研究の対象者は41万3600人、年齢の中央値は81歳となり、それぞれの人の①1年間の総受診回数、②受診した医療機関数、③それぞれの医療機関を受診した回数―から「ケアの分断指標」を算出した。

研究の結果、1年間の平均受診医療機関数は3.42か所、最大は20か所だった。1年間に2か所以上の医療機関を受診した人は全体の85%で、他国の研究からケアの分断の程度が高いとされるケアの分断指標0.7以上の割合は全体の26.1%だった。

研究チームでは、「ケアの分断指標はかかりつけ医療機関の質を表す指標の一つであると考えられ、本研究結果は、今後の医療政策の策定や評価する際の指標の一つとして活用できる可能性があると考えられる」としている。


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