横浜市立大学では、福島県郡山市との間で締結した「こおりやま文学の森資料館所蔵フィルム修復に係る協定」に基づくパイロット調査が完了したことから、5月26日に同プロジェクトを主導してきた庄司達也国際教養学部教授から品川萬里郡山市長へ結果報告を行うこととなった。
報告は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、同大の金沢八景キャンパスと郡山市役所をWEB会議システムで結んで行われる。
大正・昭和と時代をまたいで劇作家や作家、さらに文壇の世話人として活躍した久米正雄。郡山市は平成10年(1998年)に久米正雄の親族から、久米が撮影したとされるフィルム18本を購入した。このうち6本は、昭和50年に久米の息子である昭二氏が焼き直したもので、現在、資料館で公開している。
残りの12本については、経年による固着・劣化により全容を確認することができないものの、部分的に確認できる範囲では、「蒲団」「田舎教師」などの作品で知られる当時文壇の重鎮であった自然主義作家の田山花袋をはじめとした多くの文学者たちが映っていることから、希少性の高い貴重な資料であることが想定される。
昨年4月に締結した横浜市大と郡山市との連携協定に基づき実施した所蔵フィルムの修復可能性調査の結果を踏まえ、全12本のフィルムのうち2本を試験的に修復調査。庄司教授の調査結果から、修復されたフィルムには久米や田山らの姿が認められた。この成果は、わが国近代文学史での価値に留まらず、多摩川地域の郷土資料、当代の風俗研究の対象としても高い価値があることが指摘されている。