2021年12月15日 【横浜市大】歯周病の治療が大腸がんの病態の関連細菌動向に影響

横浜市立大学医学部肝胆膵消化器病学教室の中島 淳教授、日暮琢磨講師、吉原 努医師らの研究グループは、同大附属病院歯科・口腔外科・矯正歯科の來生 知診療教授らと共同で、大腸がんの発がんや進行に関連しているとされるフソバクテリウム・ヌクレアタムという細菌が、歯周病の治療により便中から減少することを、臨床研究で明らかにした。フソバクテリウム・ヌクレアタムが減少することで、大腸がんの発がんや進行に対する新規予防法の開発の原動力となる可能性を示している。

フソバクテリウム・ヌクレアタムは、歯周病に関連する口腔内常在菌。ここ数年、フソバクテリウム・ヌクレアタムが大腸がんの発がんや進行と関連があると次々と報告されており、大腸がん研究で非常に注目される細菌として知られるようになってきた。また、歯周病の指標の1つである歯周ポケットの深さが4㍉以上の割合は、45歳を越えると50%以上になり、多くの日本人が歯周病を抱えているといえる。また、歯周病は糖尿病や動脈硬化、あるいは脳卒中などの全身性の疾患と強く関連しており、歯周病への関心がより高まっている。

人々の研究室では、以前、口腔内のフソバクテリウム・ヌクレアタムの菌株と大腸がん組織のフソバクテリウム・ヌクレアタムの菌株が同一である可能性を発表した。フソバクテリウム・ヌクレアタムは歯周病に関連する常在菌であり、歯周病の治療を行えば、大腸のフソバクテリウム・ヌクレアタムが低下すると仮説を立て、大腸がんの発がんや進行予防の研究に寄与するのではないかと考え、この研究を行った。

研究グループは、大腸内視鏡検査を受け、大腸腫瘍を認めた患者の唾液や便、大腸腫瘍組織の一部を採取し、歯周病治療を約3ヶ月間受けてもらった。歯周病治療後に大腸腫瘍を切除し、その際に再度、唾液、便、腫瘍組織を採取。歯周病治療前後のこれらの検体のフソバクテリウム・ヌクレアタムの動向をDigital PCRという手法で調べたところ、歯周病治療が成功した患者では、治療後に便のフソバクテリウム・ヌクレアタムが減少したが、歯周病が改善しなかった患者は、減少しなかった。

唾液や大腸腫瘍組織については、歯周病が改善した患者でも、歯周病治療前後でフソバクテリウム・ヌクレアタムの減少は見られなかった。一方で、異型度が強い腫瘍組織をもつ患者の便のフソバクテリウム・ヌクレアタムは低異型度の腫瘍組織のみの患者の便よりも多く検出され、腫瘍の進行に伴ってフソバクテリウム・ヌクレアタムが増加していくことが示唆された。


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