横浜市立大学先端医科学研究センタープロテオーム解析センターの木村弥生准教授、梁 明秀センター長(大学院医学研究科微生物学教授)ら研究グループは、質量分析計を利用したプロテオーム解析技術を用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の予後と密接に関連する血清タンパク質を明らかにした。これらのタンパク質の測定は、予測される予後に基づいた適切な治療の提供に役立つことが期待される。この研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。
新型コロナは、2019年に中国武漢で出現以来、世界的な猛威を奮っています。患者の多くは、軽度の呼吸器症状に留まり、治療の有無にかかわらず回復するが、約20%の患者は呼吸不全を起こして酸素吸入が必要となる。
これらの患者の一部は重篤な呼吸不全となるため、人工呼吸管理を含む集中治療が行われる。さらに、通常の人工呼吸管理でも不十分な場合、体外式膜型人工肺(ECMO)の装着が必要となることがある。
COVID‐19では疾患の進行を正確に予測し、限られた医療資源を最も必要とする患者に配分することが極めて重要になる。
研究ではまず、質量分析計を利用したプロテオーム解析技術により、COVID‐19の重症患者の入院時血清で予後と密接に関連して増減する血清タンパク質を探索。その結果、COVID-19の重症患者のうち、予後不良の患者と予後良好の患者では、27種類のタンパク質の量が異なっていました。
ソフトウェアを用いた解析により、27種類のタンパク質のうち、15種類はインターロイキン1(IL-1)、IL‐6、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインシグナルによって制御されている可能性があり、その量的な違いは、全身の炎症反応や心血管障害に関与していることが示唆された。
さらに、抗原抗体反応を利用して微量生体物質を定量する方法により、血清中タンパク質濃度を測定した結果、重症患者の高感度の予後マーカーとして機能する物質が明らかになり、またこれらは、既存のバイオマーカーよりも疾患の予後に関連していることがわかった。この研究成果は、予測される予後に基づく、限られた医療資源の適切な配分や、ハイリスク患者に的を絞った治療の提供に役立つと考えられる。