中央省庁及び都道府県の機関や関連団体などの事務従事者を対象に、執務上の参考に供するための各種情報を正確・確実・迅速にお届けしています。
無人回転翼機（ドローン）の社会実装が進むなか、気象分野でもドローンの活用が検討されている。特に、極域や発展途上国など、地上からの観測網が不十分な地域で、ドローンを利用して高頻度・多点展開が可能な気象観測システムを構築できれば、高精度の気象予測計算のための貴重な観測データを得ることができる。目覚ましいスピードで技術開発が進むドローンに、小型気象センサーを搭載し、安全に気象観測を行う時代が目前に迫っており、世界的に様々な動きがある。
しかし、機体の排熱による気温測定への影響など、ドローン独自の誤差要因を克服する必要もあるため、気象観測に特化した機体が開発されている。一方、気象観測に特化した機体は、高価で運用に専門的知識が必要となるため、活用シーンが限定されてしまうという懸念もある。このため、安価で取り扱いが容易な汎用ドローンを用いた気象観測手法を確立することが求められている。
そこで、国立極地研究所の猪上淳准教授、北見工業大学の佐藤和敏助教の研究チームは、汎用ドローンに気象センサーを取り付け、代表的な高層気象観測システムであるラジオゾンデ観測に対して、どの程度の誤差で気象観測が可能かを調べた。
室内実験から、プロペラのローターやバッテリーの排熱の影響を受けない場所を特定するとともに、回転するプロペラが作り出す下降流で気象センサーに必要な十分な通風が得られる最適な場所を見出した。また、日射の影響を軽減する気象センサーの放射シールドを開発した。
寒冷地での野外実験の結果、この研究の観測手法は、ラジオゾンデ観測の気温の鉛直分布と比較して０．２℃以内の誤差で、大気境界層の気象データを取得可能であることを実証した。さらに、これらの設定を施したドローンであれば、気象観測専用ドローンによる気温データよりも、高精度に観測できることも示した。
ドローンによる高頻度・高精度の気象観測を多点に展開できるようになれば、天気予報の予報精度が向上することも期待される。ラジオゾンデの観測網を環境負荷の低いドローンで補完できれば、持続可能な気象観測網の構築のためにも有用で、この成果は実現へ向けた重要なステップであるといえる。
Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.
