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〇国内の大規模医療DBでの45歳未満の女性約80万例のデータを用いて、BMIが平均以上であると乳がんにかかるリスクが低いことを確認
〇欧米ではBMIが大きいと閉経前に乳がんにかかるリスクが低いことが知られていたが、日本を含む東アジアでは逆にリスクが高い可能性が指摘されていた。今回の解析で、日本でも欧米と同様の関連があることを初めて明らかにした
〇肥満者の少ない日本では、BMI分布を考慮すると40歳代の乳がん検診の意義はより大きいものと考えられる。BMIと乳がんリスクの関連は人種を問わない可能性があり、乳がん発生のしくみの解明に寄与すると期待される
乳がんは、現在日本では生涯で9人に1人の女性がかかる増加傾向の悪性腫瘍。欧米では体格の指標であるボディマス指数(BMI)が大きいと閉経前に乳がんにかかるリスクが低いとされる一方、日本を含む東アジアでは関連性が不明とされ、むしろリスクの高い可能性が指摘されていた。
東京大学の研究グループが国内の大規模医療データベースを用いてBMIと乳がん発生との関連を調査し、45歳未満の女性約80万人のデータを解析した結果、BMIが標準値以上であると乳がんにかかるリスクが低く、欧米と同様の関連を持つことを初めて示した。
欧米では70歳代で最も乳がんが好発する一方、日本など東アジアでは40歳代以降は横ばいあるいは減少することが知られていた。
今回の研究の結果から、その違いは日本など東アジアでは肥満者が少ないことと関連していると推察される。このため、BMI分布を考慮すると、日本では40歳代を中心に若年からの乳がん検診の意義がより大きい可能性があるとしている。
また、BMIと乳がんリスクとの人種を問わない関連性は、未だ不明な乳がん発生のしくみの解明に寄与すると考えられる。
この研究は、東大大学院医学系研究科の小西孝明氏(医学博士課程)、田辺真彦准教授、康永秀生教授、瀬戸泰之教授らが行った。
この研究成果は、6月4日に米国医学雑誌「Breast Cancer Research and Treatment」のオンライン版に掲載された。
この研究は、厚生労働行政推進調査事業費補助金・政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「診療現場の実態に即した医療ビッグデータ(NDB 等)を利活用できる人材育成促進に資するための研究」(課題番号 21AA2007 研究代表 康永秀生)の支援により行われた。