東京大学医学部附属病院と㈱グルーヴノーツは、「人工知能を用いた医療画像と診療情報の統合による高精度な疾患画像判別モデルの開発」に関する論文を1月7日に学術誌「Journal of Gastroenterology and Hepatology」で発表した画像と数値など異なる種類のデータを同時に学習可能な人工知能(AI)の技術を用いて腹部超音波検査画像と診療情報を統合する新しい肝腫瘤の疾患画像判別モデルを開発。従来の画像診断モデルは画像のみを学習させますが、画像に診療情報を統合することで、判別モデルの精度を飛躍的に向上させることが可能になった。画像と診療情報の統合による精度の向上は、超音波における肝腫瘤の判別だけでなく、さまざまな医療分野への応用が可能となる。
慢性肝炎、肝硬変患者に対する肝癌早期発見のため、最も広く用いられる画像検査は腹部超音波検査。しかし、発見された腫瘤が治療の必要な悪性の腫瘤か、治療を行う必要のない良性の腫瘤であるかの質的な鑑別には造影剤を使用したCTやMRIなどを用いて血流の状態を診る血行動態的な評価が用いられる。これは、腹部超音波検査で得られる超音波Bモード画像のみによる腫瘤の質的な診断が難しい理由は、通常の超音波検査を用いた画像は血行動態評価に比べて画像の客観的な定量化が困難なため。
腹部超音波検査画像に客観的な定量化ができるようになれば、腹部超音波検査単独での質的な診断が可能になり、CTやMRI検査による被爆や医療費の削減に繋がる可能性がある。画像の定量化を行う方法として、深層学習などの人工知能(AI)技術がここ数年注目されている。
東大病院検査部の佐藤雅哉講師、小林玉宜臨床検査技師、矢冨裕教授、消化器内科の中塚拓馬助教、建石良介講師、小池和彦教授(研究当時)ら研究グループは、画像と数値など異なる種類のデータを同時に学習することが可能なマルチモーダル深層学習の技術を用いて超音波画像に診療情報を統合する新しい肝腫瘤の疾患画像判別モデルを開発した。
これまで、肝腫瘤の診断のために、肝臓の超音波画像にマルチモーダル深層学習によって他の情報を統合させたという報告は行われていなかった。
佐藤講師らが開発した判別モデルは、画像のみを用いた従来の人工知能(AI)モデルに比べて飛躍的に診断能を向上させることが可能となるもの。マルチモーダル深層学習による画像と診療情報の統合は、医療のさまざまな分野にも応用が可能であり、他分野への応用も期待される。