2021年5月18日 【東大】運転行動ルール化モデルを開発 危険予測を可能に

 

東京大学大学院情報理工学系研究科の加藤真平教授らの研究グループは、「完全自動運転における危険と異常の予測」に関する研究を行っている。今回、研究の一環として、模範的運転モデル対象として自動車教習所の教習指導員に着目し、運転行動をルール化した運転モデルを開発した。また、自動運転技術を用いてリアルタイムに得られる位置推定や障害物検知の結果を評価指標とすることで、開発した運転モデルを使い、ドライバーの運転行動の定量的な評価や評価に基づく危険予測を可能とさせた。

この予測に応じて自動でブレーキ制御を行うことで危険を回避する手法を確立し、これら評価手法と危険回避手法をシステム化することでAI教習システムを製品化した。自動車運転教習所は教習指導員の高齢化や採用難による人材不足により、新規免許取得者や、高齢者講習の予約待ち(平均2~3か月)が問題となっている。製品化したシステムを自動車教習所に適用することは、教習指導員の業務負荷軽減だけでなく、新規免許取得者や高齢運転者の受入拡大につながると期待される。

センチメートル級の位置推定制度を達成

カメラやレーダーを用いた従来の自動運転では、人間の運転モデルを再現できるほどの位置推定精度や障害物検知精度を達成できなかった。本研究では、自動運転に特化した高精度なセンサーや、このセンサーでの観測データと高精度地図を照らし合わせることで位置推定や障害物検知を行う自動運転ソフトウェアを導入。センチメートル級の位置推定精度や障害物検知精度を達成した。

また、車内に設置したカメラで取得した画像から機械学習モデルを用いてドライバーの顔向き推定することを可能とした。これらの結果を評価指標とし、開発した運転モデルを用いて評価することで、右左折前の車両の寄せ方や目視による確認、ショートカット、大回りなどの運転行動を教習指導員と同等の精度で評価するルールベースの評価手法を構築した。

自動車教習所での業務適用

この評価手法を自動車教習所における教習業務に適用するにあたっては、走行経路を複数区間に分割し、区間ごとに評価指標とその閾値を設定したうえで、閾値の範囲外の運転行動を異常と判定。その結果をドライバーにフィードバックするAI教習システムを開発した。また、異常と判定した運転行動の中で、特に危険な運転行動に対しては教習指導員が行うのと同様のブレーキ制御を自動で行うことで危険を回避する機能を実現した。

自動車運転教習所は教習指導員の高齢化や採用難による人材不足により、新規免許取得者や、高齢者講習の予約待ち(平均2~3か月)が問題となっている。来年6月からの高齢者技能検査では年間15万人以上の検査を行うことが見込まれており、当該検査への対応も自動車学校が抱える大きな課題となっている。

これらの課題に対し、自動運転の模範的な運転モデルを活用したAI教習システムを民間企業で製品化し、自動車教習所への適用を実現した。

自動車教習所は、道路交通法に則り車を安全に運転するために必要な運転技能の習得を行

う場で、技能習得は自動運転技術が達成すべき目標の一つとなっている。今回の適用によって、教習指導員の業務負荷軽減と新規免許取得者や高齢運転者の受入拡大だけでなく、自動運転技術が社会実装されたことで、今後より精度の高い実データの集積が可能になり、自動運転技術の継続的発展につながることが期待される。

 


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