2022年9月12日 【東大】北海道で「苫前鉱」を発見 プラチナを主成分とする新鉱物

東京大学物性研究所の浜根大輔技術専門職員はアマチュア鉱物研究家の斎藤勝幸氏と共同で、北海道で産出する砂白金から40種を超える白金族鉱物を見いだし、砂白金は多様な鉱物の集合体であることを明らかにした。また、苫前町で採集された砂白金には新種の鉱物(新鉱物)が含まれることを、電子顕微鏡による化学組成分析と結晶構造解析によって突き止め、発見地にちなんで『苫前鉱(とままえこう、学名:Tomamaeite)』と命名した。

苫前鉱はプラチナを主成分とする新鉱物。この鉱物は、現代社会で触媒や電極など工業的に重要な役割を果たしているプラチナが、天然ではどのように存在しているかを示す、答えの一つを体現した鉱物になる。

砂白金は表面だけでなく内部まで詳細に調査された。調査の要となったのが電子顕微鏡で、物性研究所電子顕微鏡室に設置されている走査型と透過型の電子顕微鏡が活躍している。結果的に砂白金から40種を超える白金族鉱物が見いだされ、日本の砂白金は決して単純ではなく、実に多様な鉱物で構成される集合体であることが明らかとなった。

苫前鉱も砂白金を構成する鉱物の一つで、苫前町の海岸で採集された砂白金に包有される最大20μm程度の微細粒子として見つかりました。それはプラチナと銅が1:3となる化学組成であることが走査型電子顕微鏡による分析で明らかとなり、そのような化学組成をもつ鉱物はこれまで知られておらず、新種の可能性が浮かびあがった。

そこで、より詳細に調べるためこの鉱物の結晶構造解析を行った。一般に、20μm程度以下の大きさしかない鉱物の結晶構造を明らかにすることは、非常に困難な課題。同研究では、それよりも小さい大きさであっても観察できる透過型電子顕微鏡を用いて、電子線回折や高分解能像を取得・解析することによって、苫前鉱の結晶構造を明らかにすることに成功した。苫前鉱の結晶構造のイメージは、立方体の角にプラチナを置いて各面の中央に銅を置いた姿に一致する。

この研究結果を、国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物・命名分類委員会に鉱物学的な証明と命名の理由を添えた申請書を提出し、審査を経て『苫前鉱』が正式に承認された。

ユニークな地質環境が生み出した「苫前鉱」

プラチナは装飾品に多く利用されるほか、触媒としても工業的に多方面で用いられる重要な元素。一方で、プラチナは天然に産出する鉱物から抽出されたものであり、どういう鉱物にどのように存在するかを明らかにすることは、鉱物学上で重要な課題であるとともに、資源のあり方を見つめるうえで社会的にも重要なテーマ。

苫前鉱はプラチナの天然における新しい存在様式であるために、それを生み出したユニークな地質環境があったと考えられる。浜根技術専門職員は、「今後はその解明や未知の鉱物の発見に取り組んでいきたいと考えています」としている。


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