東京大学、北海道大学、国立極地研究所の合同研究チームは、ドイツの砕氷船「ポーラーシュテルン号」を用いた国際観測プロジェクト「MOSAiC」に参加し、北極点の周辺海域での海氷変動の実態について、さまざまな観測機器を組み合わせた詳細な調査を行った。
今回の調査では、北極海の海氷面積がもっとも小さくなる8・9月に、海氷直下の海氷―海洋境界層における乱流エネルギーを計測し、乱流にともなう熱の動きと、海氷の厚さとの関係性について調べた。
調査の結果、二つの効果が現在の北極海の海氷変動を特徴づけていることがわかった。一つ目は、夏の海氷面積が後退するとき、海氷の運動が著しく加速する効果。特に、その底面がボコボコした海氷が周囲をはげしく動き回ることで、海氷下の海水には乱流の渦が発達し、海氷−海水間で交換される熱の量は飛躍的に増加する。
二つ目は、海氷の融け水(融氷水)が境界層に蓄積することで、海水の塩分濃度が大幅に下がり、それによって海水の結氷温度が引き上げられる効果。これは、秋以降、海水が凍り始める時期が早まることを意味します。
今の北極海では、これら二つの効果によって、夏の期間は海氷の融解する速度が大きいが、秋以降に回復する速度も大きいという特徴が明らかとなった。