アトピー性皮膚炎は、増悪と寛解を繰返す、かゆみを伴う湿疹を特徴とする皮膚の疾患で
ある。この疾患は乳児期に発症することが多く、患者数はここ数年増加している。アトピー性皮膚炎の検査では、血中抗体(IgE)やなどのバイオマーカーが用いられるが、小さな子供から採血する必要があり、採血の負担のない方法の開発が求められる。
東大大学院農学生命科学研究科の研究グループは、アトピー性皮膚炎のバイオマーカーの探索を目的に、アトピー性皮膚炎のモデルマウスを作製し、その尿中脂質を、質量分析装置を用いて網羅的に解析した。アトピー性皮膚炎モデルマウスの尿では、プロスタグランジン(PG)類の代謝物濃度が増加していた。
また、これらの脂質の合成に関与する酵素の発現がアトピー性の炎症を起こした皮膚で発現上昇していることも分かった。
一方で、アトピー性ではない皮膚炎のモデルでは、これらの脂質の尿中濃度に変化はなかった。
これらの成果をもとに、国立成育医療研究センターに来院したアトピー性皮膚炎患者の尿中の脂質濃度を測定したところ、関連脂質が多く排泄されることが確認された。これらの知見はアトピー性皮膚炎の病態生理の解明や、採血する必要なくアトピー性皮膚炎を診断できるバイオマーカーの開発に有用といえる。