■ポイント□
〇都会の働き手が地熱エネルギーを熱として直接利用できる「温泉地域におけるテレワーク」に着目
〇温泉浴用と温泉熱暖房を毎日活用しながらテレワークを実施することで、従来型よりも年間約74%のCO2排出量削減
〇エネルギー消費者の環境や社会の持続性を配慮した行動選択に期待
地熱エネルギーは発電だけでなく、熱の直接利用によっても、国産エネルギーの利用率の増加、環境負荷の低減が期待できる。地熱資源を熱として直接利用するためには、地熱資源のそばで地産地消する必要があるが、これまでの日本では、人口が都市部に一極集中し、地熱資源のある地域では過疎化が進んでいた。
東北大学の流体科学研究所鈴木杏奈准教授ら研究グループと横浜国立大学の先端科学高等研究院(IAS)リスク共生社会創造センターの稗貫峻一客員准教授は共同で、地熱資源の直接利用促進の新たな可能性に注目した。そして「温泉地域におけるテレワーク」という働き手の新しいライフスタイルに着眼し、エネルギー消費者が温泉地域にてテレワークを実施することによって環境負荷にどのような効果をもたらすのかをライフサイクルアセスメントによって定量的に評価・分析した。その結果、通勤しながら職場で働く従来型と比べて、温泉地域で温泉浴用と温泉熱暖房を活用しながらテレワークを行うことにより、年間CO2排出量を約74%削減できることがわかった。
この研究成果はSDGsを意識した行動が消費者にも求められる時代で、消費者の環境や社会の持続性を配慮した行動選択のきっかけとなると期待される。
この研究成果は1月25日、科学技術振興機構(JST)の「科学技術情報発信・流通総合システム」(J‐STAGE)で公開されている「日本地熱学会誌」に掲載された。