東北大学大学院医学系研究科と東京都、国立感染症研究所の合同チームが行った調査で、夜間営業の飲食店と、医療機関・福祉施設での新型コロナウイルス感染症の発生頻度クラスター(感染報告者数5名以上)が他の場面と比べて高いことが明らかとなった。保健所での積極的疫学調査による情報解析によりわかったもの。また、夜間営業飲食店での感染報告者数は、家庭内や医療機関・福祉機関よりも早期に発生し、他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすいことも判明した。
2020年1月23日から12月5日の間に東京都に報告された新型コロナウイルス感染者の保健所での積極的疫学調査による情報を解析。夜間営業の飲食店と医療機関・福祉施設では、他の場面と比較してクラスターを生じる頻度が高かった。
夜間営業の飲食店での感染報告者は、家庭内と医療機関・福祉施設での感染報告者よりも早期に発生し、他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすかった。
感染拡大をコントロールすることは、ワクチン接種のみでは困難であり、感染拡大のハイリスク群に焦点を絞った介入の実施が必要であると考えられる。
東北大など合同チームは、2020年1月23日から2020年12月5日の間に東京都に報告された新型コロナウイルス感染者4万4054人を対象として、保健所での積極的疫学調査による情報を用いた後方視的解析を行った。
その結果、感染した場面が特定可能だった1万3122人のうち、夜間営業の飲食店での感染報告者が1174人、家庭内での感染報告者が6678人、医療機関・福祉施設での感染報告者が2733 人だったことが明らかになった。
感染した場面6624件を特定したところ、夜間営業の飲食店の18.9%(72/380件)と医療機関・福祉施設の36.2%(119/329件)とでクラスターが多く生じていた。
特定された夜間営業の飲食店380件の中では、接待を伴う飲食店でクラスターが30.6%(59/193件)と多く生じていた。一方、接待を伴わない飲食店でのクラスターは7.0%(13/187件)。夜間営業の飲食店での感染報告者は、家庭内や医療機関・福祉施設での感染報告者に先行して発生し、この傾向は異なる流行時期(第1波と第2波)で共通していた。
感染した場面が特定可能だった 1万3122人のうち582人(4.4%)が、他の場面へのさらなる感染拡大を生じていた。夜間営業の飲食店での感染報告者と比較して、家庭内と医療機関・福祉施設での感染報告者は他の場面へのさらなる感染拡大を生じにくかったことが明らかになった。
家族以外へのさらなる感染拡大に限定した解析では、夜間営業の飲食店での感染報告者と比較して、職場、家庭内、医療機関・福祉施設、その他での感染報告者はさらなる感染拡大を生じにくかったことが明らかになった。