東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野とサスメド㈱、日本腎臓リハビリテーション学会は、三者で進めていた慢性腎臓病患者向けの治療用アプリの臨床試験の患者登録が完了したと発表した。
慢性腎臓病は心不全・心筋梗塞・脳血管障害などのリスク因子で、日本国内で1330万人が罹患していると推計されている。慢性腎臓病患者の発症要因としては糖尿病や高血圧などの生活習慣病が挙げられ、生活習慣の変化とともに、患者数が増加している。
また、日本国内の透析患者は35万人を超え、透析治療の医療費は患者一人当たり年間500万円と高額なことから、透析にかかる医療費は総医療費の4%(およそ1兆7000億円)を占めるほどに上っており、わが国社会保障費の適正化を図る上で、慢性腎臓病患者の透析への移行を食い止めることが喫緊の課題となっている。
ここ数年、慢性腎臓病患者の腎機能の改善もしくは悪化抑制において、腎臓リハビリテーションが有効であることが示され、保存期の慢性腎臓病患者に関しては、運動療法をはじめとする腎臓リハビリが推奨されている。
2011年には日本腎臓リハビリテーション学会が設立され、腎臓リハビリテーションガイドラインも発刊されている。一方で、腎臓リハビリが普及するには、各医療機関での医師や理学療法士などによる腎臓リハビリの実施では限界があり、さらに新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、医療機関への受診抑制も相まって、新たな解決策が求められている状況となっている。
一方で、医療の質の向上と効率性の向上を両立させるために、情報技術の活用が求められ、ソフトウェア医療機器を用いた疾患の治療が進められている。スマートフォンは急速に普及が進み、60歳以上の世帯保有率でも81.3%を占め、今後さらに普及率が増加していくことが予想されている。
三者は、スマホの今後の普及率増加と、医療者不足の課題を鑑み、治療用アプリを通じた腎臓リハビリの提供は、より一層医療ニーズに合致していくと考え、慢性腎臓病患者向けの治療用アプリの共同開発を開始することとなった。
今後、引き続き日本腎臓リハビリテーション学会の支援のもと、東北大内部障害学分野のこれまでの腎臓機能障害に関する研究実績とサスメドの治療用アプリの開発経験・特許技術を活かし、東北大内部障害学分野の前教授である上月正博氏(現公立大学法人山形県立保健医療大学理事長・学長、東北大名誉教授)とともに、慢性腎臓病患者向けの治療用アプリの製品化を目指し開発を進めることとしている。