新型コロナウイルス感染症の感染拡大に歯止めが関わらないが、0歳から19市の小児が新型コロナに感染するとともに、二次感染を起こす環境とも、「家庭内」が最も多いことが、東北大学大学院医学系研究科の調査により浮き彫りとなった。二次感染を起こす感染者の割合は、乳幼児や小学生よりも、中学生・高校生と年齢が高くなるにつれて高い。
インフルエンザでは小児が地域の感染拡大に重要な役割を果たしていることがわかっている。このため、流行早期の休校措置などは感染拡大阻止に有効であることが示されている。
しかし、新型コロナウイルス感染症に罹患した小児が地域の感染拡大に果たす役割は十分に明らかとなっていなかった。このため、休校措置など小児を対象とした感染予防対策の有効性の正確な評価はこれまで困難だった。
東北大大学院医学系研究科の微生物学分野の押谷仁教授らのグループは、全国都道府県が公表した20歳未満のコロナ患者の情報を用いて過去にさかのぼった解析(後方視的解析)を実施。小児患者が家庭外で二次感染を起こす頻度は低く、また二次感染を起こす小児患者の割合は中学生・高校生など比較的年齢が高い集団で高いことを報告した。
これまで知られていなかった国内の小児による感染伝播の実態が明らかになったことで、小児を対象とした感染予防対策の評価や立案に貢献できることが期待される。
学校などでの二次感染は6%のみ
全国都道府県から昨年10月末までに報告された小児患者7000人以上に対して、過去にコロナ患者と接触した環境、さらに自身が二次感染を起こした環境について調査を行った。
小児患者のうち過去に家庭内でコロナ患者と接触した小児患者が32%を占めて最多で、保育園・幼稚園・小学校・中学校・高校で感染者と接触した小児患者は5%未満だった。全小児患者のうち、10%が二次感染を起こしていた。
背景別に見ると中学生以上に年齢が進むにつれて二次感染を起こす患者の割合が上昇し、中学生・高校生での割合はそれぞれ小学生の2.7倍、2.1倍となっていた。二次感染症例が発生した環境では、家庭内が26%を占め最多で、保育園・幼稚園・学校等で発生した二次感染症例は全二次感染症例の6%にとどまった。
この研究によって、国内でどのように小児が新型コロナウイルス感染症に罹患しているのかといった感染伝播の実態が明らかになりた。小児は主に家庭内で感染しており、さらに二次感染も多くが家庭内で起きており、保育園・幼稚園・学校など家庭外での感染拡大への関与は限定的だった。
また二次感染を起こす割合は小学生よりも中学生や高校生で高く、比較的年齢の低い学童の影響が大きいインフルエンザとは異なり、小児の地域内流行に果たす役割は限定的である可能性も示唆された。今後、これらのことを踏まえた感染予防対策の評価や対策の立案に貢献できることが期待される。
この研究成果は、8月10日にFrontiers in Pediatrics誌(電子版)に掲載された。