2021年9月22日 【東京都市大】落石災害を防止へ 「防護工」の最適配置に向けた方法を開発

東京都市大学(東京都世田谷区)建築都市デザイン学部都市工学科の吉田郁政教授らは、落石リスクや建設予算を考慮しながら、道路での「防護工」の最適配置の提案を行う方法を開発した。

わが国では特にここ数年、降雨や地震による自然災害が頻発しており、人々の命と暮らしを守るため、災害リスクの軽減に向けた技術の活用が一層求められる状況にある。しかしながら、道路等のインフラを所有・管理する国や自治体の予算は有限であることから、その効率的な使用は必要不可欠。

今回開発した方法は、斜面周辺に建設された道路での落石による危険から対象を防護する「防護工」の配置について、比較的少ない計算時間で落石の速度やエネルギー、危険度を定量化し、落石リスクと建設予算を考慮した提案を可能とするもの。

この研究成果の発信を通じて、リスク情報の活用による、災害リスクの軽減に向けた意思決定プロセスの整備が進むことが期待される。これらの研究成果は地盤工学会誌(6月)等に掲載された。

有限な予算で効率的な配置

斜面周辺に建設された道路は降雨や地震による落石の被害を受ける。防護工や予防工を多く設置するほど被害を小さくできるが、道路を所有・管理する国や自治体の予算は有限であるため、効率的な配置が求められている。

今回、東京都市大建築都市デザイン学部都市工学科の吉田郁政教授らは、比較的少ない計算時間で実施できる落石のシミュレーション技術やそれに基づいて予算に応じた防護工の最適な配置を決定できる方法を開発した。

開発した方法では質点系解析を用いて落石の挙動を解析し、危険度を判定する。国土地理院により提供される3次元地形情報より斜面地形をモデル化し、落石を質点とした力学モデルにより落石の速度、エネルギーを求め、危険度を定量化、さらに、トータルコスト、すなわち、防護工の初期建設費と落石のリスクの和の最小化による防護工の最適配置を算出する。

リスクは落石による被害確率とその際の影響度の積で定義され、被害確率は、衝突時の落石エネルギーに基づく確率論的危険度評価手法により算出、影響度は交通遮断による経済損失や人身損失などから評価する。

通常は何らかの予算制約があるため、トータルコストのみから、その最適配置を決定することは現実的ではない。そこで、今回開発した方法では、初期建設費の総和に対する予算制約を設け、制約条件付き最適化問題として線形計画法により解くことで、防護工の最適配置を求めることができるようにした。


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