東京工科大学(東京都八王子市)コンピュータサイエンス学部は、伊藤忠テクノソリューションズ㈱(本社:東京都港区、CTC)との間で、スマートフォンを使用した分散処理の開発の実用化に向けた共同研究の契約を締結した。来年4月の商用化を目指す。
ここ数年、AIやシミュレーション解析に関するソフトウェア技術が進歩しており、精度の高い分析結果を得るために通常のコンピュータリソースでは処理能力が不足するケースもある。オンプレミスでの計算基盤の増強や、一時的なクラウドサービスの利用を含めて費用を抑えながら大規模な計算が可能な仕組みが必要になっている。
この研究は、ネットワークに接続した多数の端末やデバイスを連携しスーパーコンピュータ並みの計算能力を実現する「グリッドコンピューティング」と呼ばれる分散処理の技術を採用して、計算負荷の高い処理をスマートフォンに分散し実行する手法を開発するもの。
スマホは、企業が一定数をIT資産として保有し従業員に貸与している場合も多く、夜間や休日などの未使用の時間が活用できるようになれば、IT資産の利用効率も向上する。
また、スマホの高性能化によりAIやデータ分析で必要となる負荷の高い処理を既存資産で分散して処理することが可能となり、コストを押さえつつシミュレーションや予測の高速化を図ることができる。
協定締結に伴い、東京工科大コンピュータサイエンス学部・石畑宏明教授の研究室での並列分散処理に関する研究知見をベースに、ネットワークに接続した数百から数千台以上のスマートフォンを使用した大規模な計算処理を並列に分散する手法の研究を行う。対象とするのは、過去20年間のデータをもとにパラメータを変化させると予測がどのように変化するかを調べる、株価予測の性能検証処理で、これらは少量のデータ入出力と大量の計算が必要となるためスマートフォンでの処理に適している。
このプログラムは、同学部・瀬之口潤輔研究室が開発を進めており、現在東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータを使用している。
この研究では、これを多数のスマートフォンで並列実行できる環境で同様の開発と評価を行う。これらの研究シーズと、CTCによる社内や顧客のスマホの未使用時間活用といったビジネス提案を組み合わせることで、実用化を推進する。
また、この共同研究では、同学部の3年生6名が同社内の環境でのソフトウェア開発やビジネス提案などに関わっており、同大の推進する産学連携による実学教育の試みとしても期待される。