東京医科歯科大学では、消化器内科の竹中健人助教と高等研究院の渡辺守院長、同大病院光学医療診療部の大塚和朗教授のグループが、ソニー㈱との共同研究で、潰瘍性大腸炎内視鏡画像に基づくコンピューター画像支援システム(DNUC)を開発した。この研究はソニー㈱との包括連携プログラムの支援のもとで行われた。また研究の統計解析については東京医歯大臨床統計学分野と共同で行われた。一連の研究成果は、Gastroenterology誌、Lancet Gastroenterology and Hepatology 誌などのオンライン版で発表された。研究グループでは、将来的に潰瘍性大腸炎に対する内視鏡評価の方法を変えるツールとすべく、今後は実用化に向けて検討を進める方針だ。
潰瘍性大腸炎は慢性の炎症性腸疾患で、症状の寛解と増悪を繰り返し、日常生活の質に強く影響する疾患。ここ数年の治療の進歩の結果、症状を抑えるだけでなく、病気の炎症そのものをコントロールすることが可能となった。炎症のコントロールためには症状寛解だけでなく「粘膜治癒」を達成することが重要であり、下部消化管内視鏡を行い「内視鏡的な寛解」や「組織学的な寛解」を評価することが必須となっている。
しかし、評価を行うには病気に対する知識や経験が必要で、医師の主観に基づくため相違が生じることが問題となっていた。さらに、「組織学的な寛解」評価のためには内視鏡検査で粘膜生検を採取する必要があり、採取に伴うコストや合併症が避けられないという課題を抱えている。
人工知能(AI)技術の進歩により、医療の領域でもさまざまなコンピューター支援機器の開発が進められている。この研究では深層学習というAI技術を用いることで、潰瘍性大腸炎の内視鏡画像に基づくコンピューター画像支援システム(DNUC)を開発し、精度を前向きに検証することを目的としている。