■ポイント□
〇ウイルスを捕捉するバイオセンサー表面をつくり、ウイルスを1つずつ検出可能な「ポア計測」を用いてこれを捕捉(相互作用)する様子を観測することに成功
〇ウイルスの挙動をAIで解析、捕捉の情報を抽出
〇従来よりも迅速かつ高感度なウイルス検出法開発等応用へ期待
東京医科歯科大学生体材料工学研究所の宮原裕二特任教授と堀口諭吉非常勤講師の研究グループは、同大大学院医歯学総合研究科ウイルス制御学分野の山岡昇司教授、武内寛明准教授の研究グループ、アイポア㈱(革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)発ベンチャー企業)の直野典彦CEOと坂本修CTOの研究グループとの共同研究で、ウイルスを捕捉するバイオセンサー界面の開発を実施し、ウイルスを一つずつ検出可能な「ポア計測」と呼ばれる技術を用いて、その様子を観測することに成功した。
この研究は文部科学省科学研究費補助金と革新的研究開発推進プログラム、さらに旭硝子財団の支援のもとで行われたもの。研究成果は、米国化学会誌 ACS Applied Materials & Interfacesにオンライン版で発表された。
呼吸器感染症の迅速発見に期待
インフルエンザ等をはじめとした呼吸器感染性のウイルスは、人々の健康・生命を脅かすだけでなく、社会経済などへも深刻な影響をもたらす。こうしたリスクは、新型コロナウイルスの登場によって危険性が世界規模で認知されている。一方で、これらは目に見えないため、迅速に発見し対策を投じることが難しく、パンデミックを防げないケースが目立つ結果となっている。このような現状を解決するためには、従来の手法とは異なる新しいウイルス検出システムを開発していく必要がある。
抵抗パルスセンシング(RPS、ポア計測)と呼ばれる微粒子計測手法は、検出対象を一つ一つ計測することが可能。このため、迅速かつ高精度なウイルス検出技術への応用が期待できる。
今回の研究成果では、ウイルスを計測するために使用するナノ-マイクロサイズの非常に小さな孔の表面上にインフルエンザウイルスを捕捉するバイオセンサーを設け、インフルエンザウイルスが孔を通過する際にそのセンサー表面上に一時的に捕捉される様子を計測することに成功した。
また、得られたデータの解析にAIを活用したところ、ウイルスをターゲットとしない表面で計測を実施した場合のデータとの違いを顕著に見分けることができた。