早稲田大学では、国内だけでなく海外でも知られているアパレル企業・ユニクロなどを展開する㈱ファーストリテイリング代表取締役会⾧兼社⾧の柳井正氏(早稲田大政治経済学部卒)の寄付により、2014年から早稲田大とUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)は連携して、日本文化研究ならびに日本文化そのもののグローバル化に取り組むプロジェクト『柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェクト』(柳井イニシアティブ)を進めている。
これまで精力的に活動してきたが、同事業での独創的かつ画期的な学術・文化事業を評価いただき、さらに日本文化を積極的にグローバルに展開することが重要と柳井氏が評価し、早稲田大に対して 今年から10年間で約5億8500万円の寄付が行われることとなった。
「柳井イニシアティブ」では、すでに連携しているUCLAに対して、柳井氏が2500万米ドル(約27億5千万円)の寄付を行っており、日本文化研究に対する個人による支援額としては最大規模。これは、グローバルな日本文化研究に、日米双方の先進的な大学が連携して取り組んでいることが高く評価されたものといえる。
「柳井イニシアティブ」は、世界中の研究者が進めている日本文化研究をひとつのネットワークとして構築し、日本の第一線で活躍する研究者の知識と経験を世界に発信し、日米の研究者や学生が互いに切磋琢磨するなかで、未来の日本文化研究を創造することを目標にしている。
これまで同イニシアティブでは、野村万作氏(早稲田大第一文学部卒・早稲田大芸術功労者)、野村萬斎氏(同大推薦校友)を中心に「万作の会」出演による「Five Days of Kyogen」や、是枝裕和監督(同大第一文学部卒・理工学術院教授)による「レトロスペクティヴ映画祭(「Cinema from the Outside In」)」などの国際イベントを行ってきた。
また、同イニシアティブの一環として開発された日本の多くの古典で使用されている「変体仮名」の主要な字の読み方をゲーム感覚で身につけられる無料スマートフォンアプリ『変体仮名あぷり・The Hentaigana App』により、日本の「変体仮名」の美しさや読む楽しさを再発見する機会を提供。これら優れた日本文化をグローバルに紹介することにより、日本文化そのもののグローバル化も目指している。
初期研究者育成目指し「アワード」創設
支援の継続を受けて、「柳井イニシアティブ」の共同責任者である早稲田大の十重田裕一教授(同大学術院)と、UCLAのマイケル・エメリック教授(同大文学学術院教授)は、これまで取り組んできた共同研究や教育をさらに発展させる考え。このため、日英両言語での教育を実現し、国際的ステージで日本文化研究を牽引しうるキャリア初期研究者の育成を目的とした「柳井イニシアティブアワード(仮称)」や、海外での学会やシンポジウムの参加を支援する「柳井イニシアティブ・トラベルアワード(仮称)」の設置(同大学生等対象)を検討している。
同大では、若手研究者育成を目指して大学院文学研究科内に「国際日本学コース(Global‐J)」も設置している。
また、この新型コロナウイルスの感染拡大という現状に端を発し、全世界の日本文化研究者が一層密に触れ合えるオンライン拠点(ハブ)の開発、さまざまなデジタルリソースの開発などに取り組むこととしている。