■ポイント□
〇未曾有の豪雨発生による都市浸水を精緻に予測する、リアルタイム浸水予測システム(S‐uiPS)を、東京都23区を対象として9月下旬から一般公開
〇一般公開に先立ち、防災の日である9月1日から文科省のDIAS(データ統合・解析システム)上で、先行公開を開始
早稲田大学理工学術院の関根正人教授らと一般財団法人リモート・センシング技術センターによる研究グループは、東京都23区で発生する都市浸水をリアルタイムで予測するシステムである『S‐uiPS(スイプス、Sekine‘s urban inundation Prediction System)』を2019年に開発し、これまで社会実装に向けて準備を進めてきた。
同システムの9月下旬(21日頃を予定)に一般公開を行うことが、決定。また、一般公開に先立ち、ユーザーを限定した3週間ほどの先行公開期間を設けることとし、防災の日である同9月1日にスタートした。
この研究成果の一部は、文科省補助事業「地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業」の支援を受け、データ統合・解析システム(DIAS)を利用して得られたもの。
先行公開期間設け「正確性」見極め
地上・下水道・都市河川といった都市内の雨水の流れを力学原理に基づき一体的に計算し、その結果として浸水を予測し、かつ速報性ばかりでなく信頼性の高い浸水情報を住民に届けることが出来る手法構築を目的に、研究を進めた研究グループは、2019年5月に「S-uiPS」を開発・発表した。
研究の発表は 2019年5月に行ったものの、その後、今回の一般公開に至るまで3年の期間を要した。公開を前にして、都市インフラに関するデータベースに修正すべき点があることが判明し、慎重な見直しを行なうべきと判断したことに端を発する。その後、コロナウイルスの感染拡大によりこれまで通りの研究活動が制約を受けることになった。
この間も活動は継続し、データベースの点検・修正や計算コードの確認、計算精度の検証などに取り組み、公開されることとなった。
人々の命に関わる情報には速報性と正確性が重要であることは言うまでもない。研究者としてできるだけ正確な情報を届けしたいと考えており、一般公開の前に先行公開期間を設けてユーザーの意見を求めることにしたのも、正確性を見極めてから市民らに活用もらいたいと考えたため。