早稲田大学スポーツ科学学術院の林直亨教授らの研究グループは、液状の食べ物を口の中に含んで(ゆっくり味わって)、あるいはよく噛んでから食べると、普通に飲み込む際に比べて、食後90分間にわたりエネルギー消費量が増加することを、明らかにした。この研究成果は、ゆっくり味わって、よく噛んで食べること(咀嚼すること)が食後のエネルギー消費量を増加させることの科学的論拠となる。「咀嚼をする」ことを基本とした減量手段の開発に、今後役立つことが期待される。
この研究成果は、12月9日午前10時(グリニッジ標準時)にNature Publishing Group(英国)のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』で掲載された。
早食いに関連して体重が増加する可能性が示唆されている。これまでに、固体の食べ物について、食べる速さが早く、飲み込むまでの咀嚼する回数が少ないほど、体重やBMIが増加傾向になることは、すでに林教授らの研究グループが報告している。
早食いが体重増加をもたらす要因には、①早食いが過食をもたらすことと、②早食いが食事誘発性体熱産生量(DIT)を減らすこと―の二つが関与すると考えられている。林教授らの研究グループの報告は、後者の影響について示唆している。すなわち、300kcalのブロック状の試験食や、パスタなどの食事をよく噛んで食べると、早く食べるよりもDITが増加することを明らかにしている。
ところが、これらの研究では、飲み込む際の食塊の大きさがDITに与える影響を排除することができなかった。そこで、今回の研究では、液状の食物を用いた際でも、固体の食物同様の現象が起こるのかを検証。また、飲料を摂取する際でも、ゆっくり味わい、よく噛むことがDITの増加をもたらすか検討した。
昔から「よく噛んで食べなさい、牛乳もよく噛んでから飲みなさい」などと言われる。これらの言葉の意義はこれまで明らかではなかったが、この研究によって、ゆっくり味わい、よく噛むことの科学的裏付けが示された。