文部科学省は、「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高校のあり方を探る調査研究協力者会議を設置し、9月28日に第1回会合を開催した。通信制高校の質の確保・向上に向けては、これまで一部の通信制高校で不適切な学校運営や教育活動等の実態がみられる状況を踏まえ、今年3月に学校教育法施行規則や高等学校通信教育規程を改正。教育課程の編成・実施の適正化やサテライト施設の教育水準の確保に向けた取組を進めてきた。一方で、「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高校のさらなる質保証は、生徒の学びを保障する観点からも解決すべき課題が多い。同会議では、通信制課程での高校教育に関して、①通信制課程の教育方法や学習支援体制、②設置認可基準・所轄庁‐それぞれあり方を中心に議論を進める。
当初の目的と異なってきた生徒像
現在の通信制課程の教育制度は、勤労青少年を前提として、自宅等で「自学自習」に取り組むことを原則とした特例的な教育方法(添削指導、面接指導、試験、多様なメディアを利用した教育)を採用している。
一方、広域通信制高校の生徒の実態として、3分の2は不登校経験のある16~18歳の未就業者が主であり、これらの生徒は、在籍する高校の本校所在地から遠距離にある都市部等に在住している場合が多い。週何日か定期的に登校して学校教員から対面の面接指導等による学習支援が必要な時に受けられるような環境にはないことなどから、「自学自習」の学習習慣を身に付けることが困難な傾向が強い
現在の通信制教育課程制度が従来想定していた学ぶ意欲を強く持ちながらも就業のためにその機会が得られないといった生徒像とは大きく異なるため、ここ数年「自学自習」が困難な生徒が大多数を占めている実態を踏まえた通信制課程の教育方法や学習支援体制等の在り方を検討することが必要となっていた。
また、ここ数年、勤労青少年を前提とした特例的な教育方法等であるため、設置が比較的容易となる場合があることなどから、広域通信制高校の設置数が急激に増加している。一方で、一部の学校では多様な生徒の実態に対応した学校教育としての質保証が十分ではなく、不適切な学校運営や不十分な教育活動等の実態がみられる。さらに、広域通信制高校が設置するいわゆる「サテライト施設」が所轄庁の自治体の圏域を超えて全国各地に多数設置されており、設置認可等のあり方も大きな課題となっている。