2021年8月23日 【慶応大】VR環境の物体サイズ知覚などの特長解明 ゲーム開発応用へ期待

慶應義塾大学文学部の板口典弘助教は、心理学的に厳密な手法を用いて、没入型ヴァーチャルリアリティ(VR)環境での物体の大きさ知覚のバイアスや、仮想手を用いた物を掴む運動(到達把持運動)の特徴を明らかにした。具体的にはまず、VR環境内の物体は、それが身体部位であろうと日常物品であろうと、実際よりも約5%小さく知覚されることを示した。

次に、仮想手を用いて物体を掴む際には物体が現実にも存在し、実際に掴める場合には、手の開き幅が約40%程度も大きくなる一方で、物体が仮想的(視覚的)にしか存在しない場合には、手の開き幅は現実環境とほぼ変わらないことを明らかにした。

この研究成果は、VRを用いた研究実施や、より高い没入感・より疲れないゲームの開発など、幅広い分野で応用されることが期待される。

この研究は、8月13日に学術誌「Frontiers in Virtual Reality」(オンライン版)に掲載された。

近年、バーチャルリアリティ(VR)を用いた研究やゲームが増えている一方で、現状のVR環境と現実環境の間には、いくつかの差や違和感が存在することも事実。このような差は、研究であれば結果の解釈、ゲームであれば没入感の低下などに影響を及ぼす要因となり、特性を正確に理解した上での効果的な対策が望まれる。

この研究では、VR環境での「知覚」と「運動」という二つの側面における問題点を解決するために行われた。

実験の結果、①VR環境の物体は、それが仮想手でも日常物品でも、主観的等価点の平均値が約95%であること(約5%の過小評価)、②大きさ知覚の弁別閾の平均値は実際の大きさの約3%であること、③過小評価は検討した三つの要因すべてに影響を受けないこと、④過小評価の大きさは、参加者の手の大きさと正の相関を持つこと(相関係数 0.32)が明らかとなった。

また、到達把持運動課題に関しても実験を実施。VR環境内で仮想手を用いてターゲットを掴む運動(到達把持運動、Figure 1E)を行った。ターゲットは直径 1.5㌢、高さ2㌢の円柱。その際の親指と人差し指の開き具合の変化を実験条件ごとに検討した。ターゲットの触覚FB(フィードバックあり VS なし)と仮想手の形状(CGの手 VS 親指と人差し指の位置のみ球として呈示、Figure 1F)という要因を操作。計4条件(2触覚×2形状)を現実環境での到達把持運動と比較した。

実験の結果、①仮想環境条件すべてで現実環境よりも運動時間が長くなること、②指の最大開き幅は触覚FBがない条件では現実環境とあまり変わらないものの、触覚FBがある場合(実際に掴める場合)には現実環境よりも約4割(約1.5㌢)も大きくなること、③すべての仮想環境で、指の開き幅がピークになるタイミングが早まることが明らかとなった。


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