慶應義塾大学大学院医学研究科は、修士課程医科学専攻アントレプレナー育成コースを設置し、高齢化社会に伴う社会課題、医療ニーズに対応し医療産業創出を担う人材育成を行っている。昨年度開講した。
同コースでは、生理学などライフサイエンス基礎や臨床知識、レギュラトリーサイエンス、生命倫理やビッグデータ解析、IT技術、さらに組織マネジメントや事業戦略などについて、大学院経営管理研究科と湘南藤沢キャンパス(SFC)と連携し、包括的な教育プログラムを提供する。
さらに、海外研修やインターンシップなど学外活動、メンター制度など多様なサポートを通じて次世代を担うアントレプレナーを育成する。
2019年1月の科学技術・イノベーション創出活性化に関する法律の施行に伴い、教育だけでなく、新しいイノベーション創造の拠点として、大学の役割が期待されている。慶應義塾大は2018年度に、文科省の「オープンイノベーション機構の整備事業」に採択され、医学部ではこれまで複数のスタートアップ(ベンチャー企業)を設立。再生医療、デジタルヘルスケアなど新モダリティ(様式)を活用した医療課題の解決をまい進している。
現在、海外を中心に再生医療、抗体医薬、遺伝子治療といった画期的かつ効果的治療法が大学の研究成果をもとに、スタートアップで開発されている。国内でも大学と企業の産学連携が行われてきたが、大学の研究成果を社会実装し、医療現場に届けるためには事業計画・資本政策・臨床研修、さらにそれらを支援する企業・投資機関などのエコシステムが不可欠となっている。
特に、基礎研究と事業性の両面を理解する経営者を育成することが、創薬、医療機器、デジタルヘルスでのスタートアップ創出と、世界展開への課題となっている。
同コースはこうした現状認識を踏まえて昨年4月に創設。〝Invention(研究成果)×Implementation(事業開発)イコールInovetion(イノベーション)〟を果たす人材を育成することを目指している。
生理学や薬理学、代謝、がんなどのライフサイエンスの知識だけでなく、皮膚科、眼科、内科などの臨床や生命倫理を学習。研究室へ所属し、研究に従事することで、研究のプロセス、研究者とのネットワーキングも可能となる。
事業計画に関しては、レギュラトリーサイエンス(臨床研究、治験)や組織マネジメント、事業戦略など慶大病院臨床研究推進センターや大学院経営管理研究科と連携したプログラムが準備されている。
また、アントレプレナー育成コースの特徴として、臨床のビッグデータを用いた検査技術、アプリを用いた治療法の開発などのデジタルヘルスに対応するため、湘南藤沢キャンパス(SFC)と連携。ビッグデータやAI、IT等に関する講義も備えている。