2022年5月13日 【広島大】西日本豪雨災害が片頭痛発作を誘発 ビッグデータを用いた縦断分析

■ポイント□

〇2018年7月に広島県を中心に発生した西日本豪雨災害の被災者で、片頭痛発作治療薬を新規に処方された人の割合が増加したことが明らかに

〇自然災害が片頭痛を誘発しうることを臨床医が認識し、災害前患者教育や災害時の薬剤処方体制の構築に生かすことが重要

 

広島大学大学院医系科学研究科の松本正俊寄附講座教授らによる研究で、2018年西日本豪雨災害の被災者のなかで、被災を契機に片頭痛発作治療薬の処方を受けた人の割合が増加していることが明らかになった。これまで、自然災害によって片頭痛発作が誘発されることを実証した研究はなく、本研究の結果は今後の災害対策および頭痛診療に役立つことが期待される。この研究成果が米国学術誌「Headache:The Journal of Head and Face Pain」にオンライン掲載された。

この研究は、松本教授と、大学病院の吉田秀平助教、大学院先進理工系科学研究科の鹿嶋小緒里准教授が、北広島町八幡診療所の岡崎悠治医師、自治医科大学地域医療学センター 小池創一教授と共同で行った。

被災後1年間で被災者の0.7%に頭痛薬処方

世界的な気候変動により自然災害は年々増加している。自然災害の被災者は、精神的ストレスを強く受け、それに関連した様々な健康被害をもたらす可能性がある。これまでの研究で精神的ストレスと片頭痛発作には関連があることが示唆されていたが、自然災害が片頭痛発作の頻度や強度にどのような影響を与えるかは分かっていなかった。

そこで今回の研究は、厚生労働省から許可を経て、西日本豪雨災害の被害が大きかった3県(広島県、岡山県、愛媛県)の医療レセプト(診療報酬明細書)データを分析し、15-64歳の住民の片頭痛発作治療薬の新規処方を災害後12カ月間で評価した。

データに含まれる15-64歳の住民347万5515人のうち、0.46%(1万6103人)が市町村により被災者として認定された。被災前12ヵ月間で片頭痛発作治療薬の処方を受けていない無治療住民(344万7356人(99.2%))のうち、被災後12ヵ月間に被災者群0.7%(111人)、非被災者群0.43%(1万4626人)が新たに片頭痛発作治療薬を処方された。

この被災者群の片頭痛発作治療薬の新規処方率は非被災者群の処方率に比べて有意に高い値となった。また、災害前に片頭痛発作治療薬の使用歴のある住民(2万2592人(0.65%))については、被災者群は非被災者群に比べ、毎月の片頭痛発作治療薬平均処方錠数が有意に増加した。

自然災害の被災者は、片頭痛発作治療薬をより多く処方されており、これは片頭痛発作の頻度や強度が増えていたことを示している。


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