2021年5月31日 【岡山大病院】歯科局所麻酔剤の医師主導治験を開始

岡山大学病院が主管し、全国10施設で新しい歯科用局所麻酔剤『アルチカイン製剤:OKAD01』の医師主導治験が6月に始まる。この知見が順調に進み、新薬として承認されると、わが国としては約20年ぶりとなる新しい歯科用局所麻酔剤が誕生することとなる。痛みのない歯科治療のための麻酔薬として、体に蓄積しにくく、高い安全性が期待される。

この新しい歯科用局所麻酔剤(アルチカイン製剤:OKAD01)を日本で使用できるようにするために、岡山大病院歯科(歯科麻酔科部門)が主体となり、岡山大病院新医療研究開発センターと製薬企業(昭和薬品化工㈱とSeptodont社(カナダ))等からの支援を受けて、戦略的に準備をしてきた。その過程として、2016年10月から2017年3月までの期間に、岡山大病院で医師主導治験(第I相試験)を実施し、2018年8月から2019年9月までの期間に、岡山大病院が主管となって全国11施設で医師主導治験(第Ⅱ相試験)を実施してきた。

今年6月からは、同様に岡山大学病院が主管となって全国10施設(予定)で医師主導治験(第Ⅲ相試験)を実施する。この最後の治験で有効性と安全性が確認されると、新薬として国に申請される。そこで承認されれば一般の歯科治療で使用できるようになる。

歯科用局所麻酔剤、少ない選択肢

歯科治療で使用される局所麻酔剤(歯科用局所麻酔剤)には、痛みのないように、よく効くことが求められているが、歯科治療の内容や患者の全身状態によっては、作用時間の長短や、患者さんの体に合った麻酔薬を使用した方がよい場合がある。よって、一種類の麻酔薬ですべてをカバーすることはできず、複数の種類の麻酔薬を選んで使用することが、歯科の局所麻酔には必要で、それが効果的で安全な歯科治療につながる。

現在、国内で使用できる歯科用局所麻酔剤は、リドカインを主成分とするリドカイン製剤、プリロカインを主成分とするプリロカイン製剤、およびメピバカインを主成分とするメピバカイン製剤の3種類。さらに、添加薬である血管収縮薬と組み合わせて3種類しかない。

一方、世界で使用されている歯科用局所麻酔剤の主成分は、リドカイン、メピバカイン、アルチカイン、プリロカインおよびブピバカインの5種類で、血管収縮薬と組み合わせた製剤は、欧米では全部で9種類もある。

世界の中で日本は、歯科用局所麻酔剤の選択肢が明らかに少ないのが現状。わが国では、2002年にメピバカイン製剤の開発発売以来、新しい歯科用局所麻酔剤が導入されていないのが状況だ。

国内で使用されていない歯科用局所麻酔剤の一つであるアルチカイン製剤は、米国で40%程度使用されており、欧米では9割以上使用されている国もある極めて一般的な歯科用局所麻酔剤。この薬は血中で速やかに分解されることから、体に蓄積しにくく、従来の麻酔薬よりも安全性が高いとされ、肝機能の低下している人や高齢者に有用ではないかと考えられている。

 

 


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