岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の宮竹貴久教授、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの田中啓介助教、玉川大学農学部の佐々木謙教授らの共同研究グループは、米・小麦類の世界的重要害虫であるコクヌストモドキに関して、死んだふり時間の異なる育種系統間でゲノム全体のDNAリシークエンス解析によってゲノム特徴を比較した。調査の結果、DNA変異は動く(死んだふりしない)系統より動かない(死んだふりする)系統で多くみられたという。
このなかで、ドーパミン代謝系関連遺伝子群では複数の変異がみられ、対捕食者回避にドーパミン関連遺伝子が重要なことが分かった。このほかにもカフェイン代謝系、シトクローム(酸化還元酵素)代謝系、寿命制御系、概日リズム制御系にも変異がみられ、死んだふりという戦略にも複雑な分子基盤が関与することが明らかとなった。
生物が生き延びるために選択する動きを支配する主要な遺伝子はドーパミンと、生活史を制御する複数のタイミングに関連する遺伝子が関与していることを、今回、世界に先駆けて解明したもの。
この研究成果は、11月8日英国時間午前10時(日本時間8日午後7時)に英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」(Nature Publishing Group)に掲載された。今後、人間を含めた動物の動きを制御する仕組みの解明に繋がると期待される。