2021年8月5日 【山梨大】妊婦の染毛剤、子どものアレルギー疾患に影響 エコチル調査で明らかに

山梨大学のエコチル調査甲信ユニットセンター(センター長:山縣然太朗社会医学講座教授)の研究チーム(研究担当者:小島令嗣社会医学講座助教)は、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」による約10万人のデータを用いて、妊婦の染毛剤の使用状況と生まれた子どもの3歳時のアレルギー疾患との関連について解析した。その結果、染毛剤を自宅で使用した妊婦と、職業で使用した妊婦はどちらも、使用していない妊婦と比べて、生まれた子どもが3歳時に気管支喘息やアレルギー性鼻炎になりやすい傾向があることが明らかになった。

研究グループでは、この研究に用いた染毛剤の使用状況については、質問票調査の回答によるものであり、必ずしも実際の染毛剤のばく露状況を反映しているものではないとし、今後より詳細な染毛剤の使用状況を含めた研究が行われることへの期待感を表明している。

アトピー性皮膚炎などには影響みられず

この研究では、10万4062人の妊婦のデータと生まれた子どもの3歳時のデータのうち、調査への同意撤回、死産、流産、妊婦の染毛剤の使用および生まれた子どもの3歳時のアレルギー疾患のデータに欠測がある人を除いた7万7303人を対象として解析した。

妊婦の染毛剤の使用状況は、妊娠中期の質問票から美容院、自宅、職業での使用の有無と頻度を調査した。美容院と自宅での使用頻度などのデータを使用し、妊婦の染毛剤使用と生まれた子どもの3歳時のアレルギー疾患発症の関連について、多変量ロジスティック回帰分析を用いて解析した。

一般的に小児のアレルギー疾患の関連因子として考えられているものには、妊娠前の母のBMI、妊娠時の母の年齢、妊婦のアレルギー疾患の既往、妊娠中の受動喫煙、世帯収入、分娩様式、早産、生まれた子どもの同胞の数、出生体重、生まれた子どもの性別、母乳栄養による育児、生まれた子どもの1歳時の保育所通園、生まれた子どものRSウイルス感染症罹患歴があり、それらを考慮した解析を行った。

その結果、妊婦の染毛剤の自宅使用と職業使用では、いずれも使用しなかった妊婦と比べて、生まれた子どもが3歳時に気管支喘息やアレルギー性鼻炎になりやすくなる傾向があることが明らかになった。

一方、妊婦の染毛剤の使用による生まれた子どもの3歳時のアトピー性皮膚炎と食物アレルギー発症への影響はみられなかった。また妊婦の染毛剤の自宅使用では、使用頻度が高くなるほど、生まれた子どもが3歳時にアレルギー性鼻炎になりやすくなる傾向がわかった。職業使用でも同様の傾向となった。

この研究の成果は6月24日付で環境医学分野の学術誌「Environmental Research」に掲載された。


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