山梨大学のエコチル調査甲信ユニットセンターの研究チームは、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の山梨県内の参加者(小学2年生)を対象に、採血の経験を肯定的に評価してもらうための方法を調査した。2020年4月〜2021年3月に実施した小学2年生を対象とした学童期検査・総合健診の参加者566人へのアンケートを分析し、2021年7月~2021年10月に実施した学童期検査・総合健診参加者のうち協力の得られた20人の子どもにインタビュー調査を行った。
調査の結果、子どもが採血経験を肯定的に評価できるようにするためには、子ども本人に採血の目的や採血量、研究成果についてきちんと伝えること、時間をかけ過ぎないこと、さらに子どもの努力に感謝を示すこと―などが有効であると示唆された。
一方で、調査には、子どもがスタッフに気を遣って肯定的な解釈を示した可能性が否定できないことなどの限界がある。調査チームでは、さらなる調査を異なるシチュエーションで実施することが必要ともしている。
アンケートやインタビューから、多くの子どもが採血経験を最終的には肯定的に解釈しており、麻酔の効果もあって痛みをほとんど感じていなかったことがわかった。ただし、否定的な解釈をして、強い痛みを感じたケースも少数みられた。採血やワクチン接種の恐怖と痛みの強さは関連することは既に知られている。
アンケートの分析では、痛みの度合いが低かったこと、情報提供用のパンフレットを事前に読んでいたことが、採血経験の肯定的な評価と関連していたことが示された。
インタビューでは、採血の理由を含めた事前の情報提供や局所麻酔による痛みの軽減、ディストラクションなどの工夫を施すことで、当初、採血を否定的に捉えていた子どもであっても、多くの場合で最終的には採血経験を肯定的に解釈していたことが示された。また、自分の血液を使った研究の成果を知りたいという意見も得られた。
逆に、説明や処置の時間が長いと感じられたこと、大量の血液が採取されると思っていたこと、強い痛みを感じていたことなどが、採血経験の否定的な評価につながることも明らかになった。
アンケートとインタビューの分析から、子どもが採血経験を肯定的に評価できるようにするために有効な方策が6点示唆された。
⑴なぜ採血をするのかという理由も含め、パンフレット等で情報提供する。
⑵採血の量は少量であること伝える。
⑶局所麻酔のリスクとベネフィットを保護者に丁寧に説明する。
⑷説明も含めた採血作業は迅速かつ簡潔に行う。
⒌強い恐怖や痛みを感じていたり、採血に時間がかかっていたりするケースは、苦痛を完全になくすことはできないので、処置終了後すぐに周囲の大人が子どもの努力と協力に感謝を示す。
⑹血液を研究に利用する場合は、研究結果を子どもに理解できるように伝える。
この研究で得られた知見は、子どもへの採血やワクチン接種の負担軽減につながることが期待される。