2021年12月17日 【富山大】抑うつ傾向者はネガティブ記録を思い出しがち

富山大学と北里大学の研究グループは、不安や抑うつ的になりやすい人では自分でも明確に意識することなく、ネガティブな事柄をより多く思い出しており、このような意識下でのネガティブに偏った想起は、「扁桃体外側基底核―前帯状皮質膝下部」との機能結合や、コルチゾール―ノルエピネフリン(MHPG)の相乗効果によって説明されることを、ヒトを対象とした研究により世界で初めて明らかにした。

アメリカの大規模調査によれば、不安障害とうつ病は合わせて一般人口の約4分の人々が生涯に一度は経験するといわれている精神障害で、両者は高頻度に合併しやすいことが知られている。

不安障害やうつ病を患っている人、また未発症でも不安になりやすく落ち込みやすい性格傾向を持つ人では、多数の情報のなかでも、ポジティブあるいはニュートラルな情報は度外視して、ネガティブな情報に対して過剰に注意を向け、それをより多く覚え思い出しやすい傾向があると言われている。

不安や抑うつ的になりやすい人でネガティブに偏った記憶が存在することは臨床的にも学術的にもかねてから知られていましたが、それがどのような神経生物学的なメカニズムによって生じているかについては明らかではなかった。

そこで研究は、このネガティブに偏った記憶と不安・抑うつとの関連について詳しく調べるとともに、神経メカニズムについて検証した。

この研究は、富山大、北里大、国立精神・神経医療研究センター、独立行政法人労働安全衛究所、久留米大、米国ウェイン州立大、京都大との共同研究で実施された。うつ病や不安障害に罹患していない100名の成人を対象に実施。ネガティブに偏った記憶は

ポジティブ・ニュートラル・ネガティブを含む情動的な単語をもとに作成した実験課題を用いて、意識的/無意識的なものであるかを区別しながら測定した。コルチゾールと MHPGは、連続2日間計10時点で測定した唾液をもとに、その基礎分泌量を測定した。

結果として、不安や抑うつ的な性格傾向のいずれも、自分でも明確な意識を伴わずにネガティブな刺激を思い出しやすいという偏った記憶処理と結びついていた。特に不安になりやすい性格傾向の人ほど、直前に接触した情報について、ポジティブと比べてネガティブなものをより多く取り込み、これを意識下でより多く思い出していた。

さらに、扁桃体外側基底核―前帯状皮質膝下部との機能結合やストレスホルモン・コルチゾールとMHPGとの相互作用は、このようにネガティブに偏った記憶の偏りを説明していた。


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