大阪市立大学大学院医学研究 循環器内科学の柴田 敦病院講師、泉家康宏准教授らの研究グループは、運動を行った際に酸化ストレスが増加する心不全患者が、予後不良となるこ
とを明らかにした。この研究成果は、心不全患者一人ひとりに適切な運動量の決定に光にあてるものと期待される。
慢性心不全患者は超高齢化社会で急激に増加しており、現在は「心不全パンデミック」とも呼ばれている。しかし、治療は対症療法が中心で、病気の進展を防ぐことができないため、高い再入院率・死亡率が社会的に問題となっている。これまで心不全患者の予後改善には有酸素運動が有効とされていたが、適切な運動量や運動方法はまだ定められていない。
この研究では、2013年7月から2015年3月に大阪市大医学部附属病院に入院した 94人の心不全患者を対象に、運動に伴う酸化ストレスの増減が心不全の予後に与える影響を検討した。
その結果、心肺運動負荷実験で、酸化ストレスが上昇した心不全患者の予後は不良であることが明らかになった。この結果から、心不全患者の適切な運動量は、運動時の酸化ストレスの変化を評価することで決定できる可能性があることを示唆している。
この研究から、心不全患者では運動に伴い、抗酸化能が増強し酸化ストレスが軽減する場合、運動は有益なものとなるが、運動に伴い酸化ストレスがさらに増強する場合、運動が不利益になりうる可能性が示された。
この研究結果により、運動に伴う酸化ストレスの増減を見極めることで、患者にとって適切な運動様式・運動量を決定できる可能性があると考えられる。
心不全患者に対する運動療法でのテーラーメード医療提供のためには、従来の運動療法に比べて今後酸化ストレスの変動から導き出した運動様式・運動量が、効果が高いことを示していく必要がある。また、心不全患者における運動による酸化ストレスの増加が予後に悪影響を及ぼすメカニズムの解明も重要になってくると考えられる。