■ポイント□
〇火山防災の基礎資料として有効活用
〇1万年に1回のマグマ噴火と15回の小規模噴火
〇21番目の火山地質図
大阪公立大学大学院理学研究科地球学専攻の三浦大助教授(地域防災センター兼務/所長:伊藤康人教授)らと産業技術総合研究所(産総研)の共同研究成果をもとに作成した「恵山火山地質図(産総研火山地質図no.21)」が完成した。この地質図は、今後、火山防災の基礎資料としても有効活用されることが期待される。
恵山火山は、北海道渡島半島の南東端に位置し、歴史文書による噴火記録があまり残されていない。このような火山では、火山噴出物を調べて噴火の記録を明らかにする地質学的研究が大きな役割を果たす。
恵山火山では、これまでにもいくつかの地質学研究が行われており、それらの先行研究を踏まえた上で、層序に基づく既存年代値の再検討、広域火山灰の対比、系統的な年代測定を行った。マグマ噴火と小規模噴火の噴出物を詳細に調べた結果、およそ1万年の間に1回のマグマ噴火と15回の小規模噴火が起こったことが明らかになった。
火山地質図は、活火山(111火山)の噴出物の分布と順序を調べ、火山噴火の特徴を明らかにして火山災害の基礎資料とするもの。これは、火山の防災計画立案のために重要な基本図だが、火山噴火予知連絡会が選定した「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山(50火山)」の中でも未だ半分以下の火山でしか作成されていない。
2014年の御嶽山噴火により、水蒸気噴火などの小規模噴火であっても、深刻な災害をもたらすことが明らかとなった。恵山火山では、1846年及び1874年に起こった小規模噴火の際に降灰と土石流を発生させた可能性が指摘されている。さらに、現在も活発な噴気・地震活動が継続する爆裂火口をもっていることから、今後も噴火を繰り返す活火山であると考えられている。
この爆裂火口の周辺には、学校、温泉、漁港などの居住地区が近接していることから、気象庁による地震計、傾斜計、空振計、GNSS、監視カメラを用いた火山活動の監視・観測が実施されている。2016年3月23日午後2時発表の噴火予報(恵山)から噴火警戒レベルの運用も開始されたことから、防災に資する地質情報の整備が急務となっていた。
このような背景から、今回、21番目の火山地質図として「恵山火山地質図」を刊行することとなった。