大阪公立大学大学院文学研究科の橋本博文准教授ら研究グループは、ヘルプマークの普及・活用のためにどのようなメッセージの提示が効果的であるかに関する研究を行い、『未来志向』を促すメッセージが鍵を握る可能性を示した。ここ数年、共生社会の実現に向けた取組の一環として、ヘルプマークの普及が公的に推進されている。しかし、ヘルプマークの普及、そしてその活用は十分であるとは言い難いのが現状。この研究では、近い将来に自分や自分の家族がヘルプマークを身につける日が来るかもしれないという『当事者としての未来』に思いを馳せてもらえるようなメッセージを提示することが効果的である可能性を示した。さらに、この結果を踏まえてポスターを制作し、その効果測定を行ったところ、ポスターを見た人たちの間でヘルプマークに対する肯定的な理解が高まる可能性、また、ヘルプマークは支援する側を含むみんなのためのものであるという認識も高まる可能性が示された。
この研究成果は、国際学術誌「Frontiers in Rehabilitation Sciences」に掲載された。
ヘルプマーク、活用・普及は不十分
ヘルプマークは、義足や人工関節の使用者、内部障害や難病の人、または妊娠初期の人など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている人々が、周囲の人々に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成されたマーク。
助け合いがスムーズに行われるようにと願いを込めて、『助け合いのしるし』と呼ばれることもあるが、十分に普及・活用されているとは言い難いのが現状。
こうした現状を踏まえ、ヘルプマークに対する理解が進みにくく、また活用されにくい原因を追究するとともに、ヘルプマークの主旨への理解を促し、活用を図る方法を検討するために調査・研究を行った。
橋本准教授らは、大学生121名を対象にヘルプマークを説明するための文章をいくつか用意し、どの説明文が『肯定的な理解を促すのか』また、『抵抗感を減らすのか』などについてアンケート調査を実施した。
調査の結果、統制条件よりも未来志向条件で、肯定的な理解のスコアが高く、抵抗感のスコアが低くなることが明らかとなった。これにより当事者としての未来に目を向けてもらうことを意図した説明文を提示することで、人々のヘルプマークに対する肯定的な理解が促され、抵抗感も抑制される可能性が示された。
次に、この調査結果を踏まえ、アストラムライン(広島高速交通㈱)と共同で、『当事者としての未来』に思いを馳せてもらえるようなヘルプマークの啓発ポスターを新たに制作した。また、実際にポスターを掲示し、人々の認識を変えることができるかどうかを、大学生92名を対象に調べた。その結果、掲示したポスターを見なかった人たちよりも、ポスターを見た人たちの間でヘルプマークに対する肯定的な理解が高まる可能性が示唆された。