2021年9月30日 【千葉大】わが国敗血症の実態をビッグデータが明らかに

千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学の中田孝明教授、医学部附属病院の今枝太郎特任助教らは、2017年までの8年間にわたる5000万人以上の国内入院患者のデータを抽出し、敗血症の患者数や死亡数に関する全国的なデータをまとめ、わが国の敗血症の実態を初めて明らかにした。このデータは、日本独自の診療報酬の包括評価制度であるDiagnosis Procedure Combination(DPC)の保険請求に基づくデータベースを利用して抽出したもの。

この研究により、国内での敗血症患者の死亡率は低下傾向である一方、患者数や死亡数は増加傾向にあることがわかった。高齢者は敗血症となるリスクが高く、超高齢社会であるわが国で、今後も敗血症患者数は増加傾向をたどると推測される。このことから、敗血症の早期発見だけではなく、敗血症を引き起こすきっかけとなる感染症を予防するためのワクチン接種や衛生保持などの感染症に対する予防も重要であると考えられる。

この研究成果は、集中治療医学の専門誌Critical Careに9月16日に掲載された。

敗血症は、細菌やウイルスなどの感染に対する体の反応が、自らの組織や臓器(心臓、肺、腎臓など)を傷害することで生じる生命の危険を及ぼす状態。組織障害や臓器障害を来たすため、集中治療室での治療が必要となる。ショックや著しい臓器障害を来たす場合は死に至る場合もある。

現在、世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症による呼吸不全の重症例も敗血症が多い。敗血症の発症率と死亡率に関しては、地域間格差があると言われているが、国内での敗血症の患者数や死亡数に関する全国的なデータはなかった。

□8年間の入院患者数全体にみる日本の敗血症の傾向 調査の結果によると、2017年までの8年間に、約5000万人の成人入院患者が含まれており、このうち約200万人(約4%)の患者が敗血症を発症。約36万人が敗血症によって死亡した。

敗血症患者の年齢の中央値は76歳で主な併存疾患は、悪性腫瘍(約35%)、高血圧(約26%)、糖尿病(約22%)などで、高血圧や糖尿病の患者数は年々有意に増加している。

感染源としては、呼吸器感染症が最多で、約41%。臓器障害については、呼吸不全患者が最も多く、2017年には約82%を占めていた。また、入院期間の中央値は約30日で、院内死亡率は約20%となった。

□2010年~2017年の傾向の変化 入院患者全体に占める敗血症患者の年間割合は、2010年に約11万人(入院患者全体の約3%)から2017年は約36万人(入院患者全体の約5%)に増加。入院患者1000人当たりの敗血症の年間死亡数も、2010年の約6.5人から2017年は約8人に増えた。

敗血症を原因とする死亡者数は、2017年に年間約6万人で2010年比2.3倍となった。敗血症患者の死亡率は、2010年の約25%から2017年の約18%と、減少傾向を示した。


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