2021年11月5日 【医歯大】QOL向上心理アプローチが摂食嚥下リハビリに有効

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の戸原玄教授、中川量晴助教、石井美紀(大学院生)の研究グループは、65歳以上の要介護高齢者に対する摂食嚥下リハビリテーションとして、離床・外出を促し、QOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)を高めるような心理的アプローチが有効である可能性を示した。この研究成果は、国際科学誌Gerontologyオンライン版で発表された。

摂食嚥下リハビリは、摂食嚥下関連筋を鍛える訓練により機能向上を目指す。しかし、日常生活動作(ADL)が自立していない要介護高齢者は、そもそも訓練の実施が困難である場合が多いため、このような人々に対するアプローチを考えることが臨床的に大変重要。

ここ数年、QOLを考慮した医療の研究が進んでいる。QOLと摂食嚥下機能の関係に着目すると、ADLが自立した高齢者のうち摂食嚥下機能が低下している人はQOLが低いという報告がある。つまり、思ったように食事を摂れなくなるとQOLが低下するという。

一方で、訪問診療や訪問介護サービスを利用するADLが自立していない要介護高齢者を対象とした研究は少なく、QOLが摂食嚥下機能に関連するかは十分に検討されていなかった。

また、離床して活動したり、外出したりする人は生活の質が高い傾向にある。離床や外出は身体機能と関連するだけでなく、日常生活における楽しみとなり、QOLの向上につながるなどの心理的な面も持ち合わせている。

しかし、離床や外出と摂食嚥下機能との関連に着目した研究はこれまで行われてこなかった。

そこで研究では、ADLが低く、摂食嚥下機能向上の訓練の実施が困難な要介護高齢者を対象に、離床や外出等の活動性とQOLと摂食嚥下機能との関連を明らかにすることを目的に行われた。

研究の結果、ADLや併存疾患によらず、①離床時間が長い、②外出をする、③QOLが高い場合には、スコアが有意に高く、摂食嚥下機能が良い傾向であることが分かった。離床は体幹機能の維持や、意識レベルの向上、食欲減退防止に関連することが報告されている。長時間の離床は摂食嚥下に有利な安定した姿勢保持につながることに加え、摂食嚥下関連筋群の筋力維持や食べる意欲にも関連していると考えられる。

また、加齢による活動障害由来のストレスでQOLが低下し、扁桃体や海馬に影響したり、認知機能低下が生じたりする可能性が知られている。よって、QOLが高く、慢性的なストレスから解放されたことで脳機能が健全に保たれたことが摂食嚥下機能と関連したと推測される。

外出については、好きな場所へ行く、自発的に社会と繋がることで精神的な健康の改善や認知機能低下防止が期待できる。さらに外出を契機に長時間楽しく離床できるという効果もある。このように外出により、QOL向上と離床を促すことが摂食嚥下機能と関連したと考えられるという。


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