東京医科歯科大学の研究グループは、同大病院に入院している新型コロナ感染症患者から、今年1月現在でも、重症化率が高いと言われているデルタ系統株が国内市中に長期間存在していることを確認した。昨年8月の第5波から半年以上が経過したが、わずか1%以下の割合であるものの、根絶には至っていない現状が浮き彫りとなった。
デルタ系統株による第5波の感染収束がみられた昨年9月末から11月下旬まで、国内での新型感染症患者は極めて少ない状況が維持されていた。ところが、11月初旬に南アフリカ地域で確認された新たな変異系統株(オミクロン株)が世界各地で感染急拡大するのに伴い、11月下旬以降、日本でも空港検疫でオミクロン株への感染事例が確認されるようになり、その後国内に流入した。
オミクロン系統株による急激な感染拡大に見舞わられているのが現状だが、海外で感染伝播性のさらなる増大が懸念されるオミクロン系統株の感染拡大の兆候が新たに認められてきており、わが国でも、空港検疫で新オミクロン系統株が検出されるとともにこれらの系統株の市中感染の可能性が懸念されていることから、さらに強固な感染拡大防止対策を講じると同時に社会経済活動維持とのバランスを取る必要に迫られているのが現状。
今年1月中旬に東京医歯大病院に入院または通院歴のある新型コロナ患者由来検体を用いて全ゲノム解析を行った結果、感染力の強い新オミクロン系統株への新たな感染事例を確認した。当該株は1例の患者に認められ、渡航歴や濃厚接触者歴はなく感染経路不明であることから、市中感染事例であると考えられる。
また、今回全ゲノム解析で確認されたデルタ系統株は、依然同大が報告したデルタ系統株と同一のものであることを確認。このデルタ系統株は、昨年8月の第5波から今日に至るまで市中に長期間存続しているデルタ系統株の中で、わずか1%以下の割合で存続している系統株となる。
ところが、当該株はGISAID(SARS-CoV-2 全ゲノム情報データベース)に登録されている昨年12月以降の第6波で確認されている本邦デルタ系統株の約半数(48%)を占めていることがわかり、第6波での主流デルタ系統株になりつつあることが示唆される。