東京医科歯科大学の吉田雅幸教授を中心とした全国のバイオバンク運営に関わる研究者のグループは、「バイオバンク」の利活用ハンドブック第3版を発行・公開した。このハンドブックは、主に①バイオバンク利用者向けと②バイオバンク関係者向け―の2部構成。よくある質問なども加え、バイオバンクに関連するさまざまな情報が網羅されている。
国内の主要なバイオバンクの協力を得て、ハンドブックでは、「バイオバンクとは何か」という疑問に対する回答に始まり、使い方から運営におけるノウハウや留意点を説明している。
同ハンドブックで紹介している「バイオバンク」は、将来の医学研究のために利用することを目的に、患者らから提供された血液や手術・検査資料の一部と診療情報を指す。代表的なバイオバンクとしては、東大医科学研究所に設置された「バイオバンク・ジャパン」、全国6ヵ所の国立高度専門医療研究センターが連携して設立した「ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク」がある。バイオバンク・ジャパンでは、20万人以上の患者の試料が、ナショナルセンター・バイオバンクネットでは、がんや心疾患、神経疾患などの各センターの特色を生かした試料・情報が収集されている。
さらに、わが国での一般住民を対象としたバイオバンクでは、東北メディカル・メガンバンク計画が、宮城・岩手両県の住民から15万人以上の試料・情報を集めている。うち7万人ン超が3世代コホート調査と呼ばれており、家系情報付き出生コホートに由来するものという特徴がある。
バイオバンクに関する知識がなく初めてヒト由来試料・情報を使うことを考えている研究者から、既にバイオバンクの利活用を経験した上で更なる利活用を考えている研究者、またバイオバンクの新規設置や運用の拡大を考えている研究機関等にとっても、役立つ内容となっている。
吉田教授らは、「本ハンドブックの内容を参考にバイオバンクの利活用や運営を進めていただくことで、わが国のバイオバンクの試料・情報の利活用がスムーズかつより効果的に行われることが期待される」としている。