近年、世界中で干ばつや熱波などの極端現象による被害が頻繁に報告されるようになった。南半球のオーストラリアでは、猛烈な熱波や時には山火事などの大きな被害が出ており、被害を軽減するために熱波を引き起こす大気循環場の正確な予報が重要となっている。これまでの研究成果で、南極圏で実施した特別観測でのラジオゾンデによる高層気象観測によって豪州に接近する低気圧進路の予報精度が向上することを明らかにしているが、継続的に高頻度で観測データを取得することが課題となっていた。
北見工業大学の佐藤和敏助教、国立極地研究所の猪上淳准教授と冨川喜弘准教授、海洋研究開発機構の山崎哲研究員、東京大学大学院理学系研究科の佐藤薫教授による研究チームは、南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)による上空の水平風速データが、2017年12月に豪州西部に高温をもたらした低気圧の進路予報にどのように影響するのかを調べた。
その結果、PANSYレーダー観測データを予報計算に取り込むことで、低気圧の中心の位置や気圧予報の精度が向上することを明らかにした。PANSYによる観測データを現業の天気予報に組み込むことができるようになれば、さらに天気予報の予報精度を向上させることが期待できる。
これらの成果は、英国王立気象学会の論文誌「Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society」のオンライン版に掲載された。